プーチン訪朝でもロ朝の軍事的重要性は薄い インフラ整備など経済協力も発展・拡大するか未知数

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――プーチン大統領は訪朝の直前、北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』に「ロシアと朝鮮民主主義人民共和国:年代をつないでいく友好と協力の伝統」と題する文を寄稿しました。これは彼の外交戦術としては珍しいように見えますが。

そこはわかりません。ただ、この寄稿はロシア側が提案したというよりは北朝鮮側が提案したものだと思えます。それは、2019年に中国の習近平国家主席が訪朝した際に、習主席が『労働新聞』に寄稿したことを想起させます。

それを考えると、北朝鮮は2019年当時の中国からの国賓級訪問と同レベルのことをやりたくて、今回もロシア側に同じ要請をしたものだと考えられます。

――金正恩総書記は首脳会談後の記者会見で、「朝ロ関係において最も強力な条約の誕生」「同盟関係という新たな高い水準に到達した」と発言しました。

北朝鮮の最高指導者として、これ以上のことを言えたでしょうか。当然、彼はこのような条約をとても必要としており、自ら激賞するほかなかったでしょう。

とはいえ、客観的に言えば、この条約の基本内容は1961年の条約とほぼ同じです。この条約を「最も強力な条約」だとみなすよりは、ほぼ30年間効力を失っていた友好善隣条約の復活と見たほうが正確だと思います。

無視される北朝鮮制裁

――訪朝時にロシアのペスコフ大統領報道官は、「ロシアと北朝鮮の2国間関係に関する制裁の影響の低減に関するメカニズムを創出する弾みを与え、このメカニズムが始まる」と言及しました。国連制裁などの制裁は、ロシアと北朝鮮の間では無視される、ということになりますか。

ロシアは国連の安全保障理事会常任理事国です。そのため、国連で決議された北朝鮮に対する制裁を露骨に否定して、かつそれを破ることを公の場で宣言することは不可能です。

でも、ペスコフ報道官の発言であれ、プーチン大統領の『労働新聞』への寄稿内容であれ、そして今回締結された新たな条約の内容であれ、ロシアが今後、北朝鮮に対する制裁を積極的に守らないということを意味するものです。

ロシアが北朝鮮への制裁を遵守しないということは、北朝鮮制裁自体に致命的な打撃を与えます。

――プーチン大統領は道路や鉄道建設、農業、観光分野などの経済協力について言及しました。今後、そういった経済協力が実施・拡大されるでしょうか。こういったインフラ整備も含め、経済協力はより活発化するのでしょうか。

現段階で、ロ朝間の経済交流の先行きについて予測することは難しいですね。ただ、その展望は明るくはないでしょう。それは、北朝鮮の基本的な輸出品目の絶対多数は、ロシアにはまったく必要がないものが占めているためです。

北朝鮮のおもな輸出品目は、石炭などの鉱物資源、および水産物になりますが、これらはロシアにとって必要ではありません。

道路建設などは可能ですが、別の限界もあります。北朝鮮はなんとか生活できている国なので、必要な分をすぐに支払える能力はありません。一方、ロシア側が無償で道路や鉄道を建設する理由はこれといってありません。

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