Z世代が囚われる「第三者目線」という強迫観念 メリットなき個人行動の「コンプライアンス化」

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與那覇:第三者の目線にばかり意識がいって、実際にリアルで会っている相手=「第二者」を大事にしないのは、どこか倒錯していると思うんですよ。歌手やアイドルなど、自分から遠い存在を積極的にケアする姿勢は「推し活」として、本書も採り上げるとおり近年評判です。でも、ふだん気に入って日常的に使う飲食店だって、「推し」と言えば推しでしょう? それなのにコロナが流行ると、単に行くのをやめるだけじゃなく、「私は外食しません!」とまでSNSにわざわざ書いたりして。

この店は自分の「推し」なんで、コロナで潰れちゃったら困るから、自粛せず食べに行ってるよ! とPRできた人は本当に少なかった。それはまさに社会全体が「第三者過剰、第二者過少」な方向で、Z世代化している表われだったと再認識しましたが、どうでしょう。

学生に広まる「となり見るシンドローム」

舟津昌平先生
舟津 昌平(ふなつ しょうへい)/経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

舟津:非常にクリティカルなご指摘だと思います。思い出したのが本にも書いたエピソードで、授業で学生を当てたとき、「どう思いますか」とか「はい」「いいえ」で答えられる質問をしても、かなりの割合の学生が、答える前にまず隣の友達を見る。今の学生はまず周りの人にどう見えるかを気にするんですよ。「となり見るシンドローム」ですね。

與那覇:なるほど。聞いてきた教師がどう感じるかより、他の学生の目にどう映るかだと。

舟津:つまり第二者が消えているんですよね。教室全体の中で自分が浮いてないか、恥ずかしくないかをまず考えようとする。だから答えるのが嫌で、隣の友達を見る。第二者である私からすれば、「あなたに聞いてるんですよ」と思っちゃいます。なんでそんなことが起きるんだろうと考えると、やっぱり第三者過剰で第二者過少になっているんですよ。

與那覇:抽象的な「周囲の評判」のほうが、具象性を持つ「目の前の相手の気持ち」より大事になってしまっているんですね。

舟津:そうなんですよ。

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