JR九州、新幹線全通で見えた株式上場への道筋

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赤字続きの鉄道事業とは裏腹に、その他の事業は好調だ。

分割民営化直後のJR九州には、東日本や西日本のような膨大な不動産などあるはずがなかった。「われわれには知恵しかない」(唐池社長)。そこで、自動車販売、アイスクリーム店、スーパーマーケット、思いつくかぎりの事業を行った。生き残ったのは居酒屋、パン屋、そして07年に買収したドラッグストアチェーンだ。

上場は最速でも3年後 経営安定基金が課題に

もっとも、3月には待望の博多駅ビルが完成し、阪急百貨店など230の専門店が店舗を構える「JR博多シティ」がオープン。収益力の改善に弾みがついた。

九州新幹線全通と博多駅ビル。この2大プロジェクトを終えた後、次の大型プロジェクトは株式上場である。その時期について唐池社長は「少なくとも今後2年間の経営状況を政府や市場に判断してもらってから。つまり最速でも3年後」と言う。

上場への課題は少なくない。たとえば、経営安定基金をもらった状態で上場は可能なのか。11年3月期の基金運用益は111億円。もし国から返上を迫られれば経常赤字に陥りかねない。

しかしJR東日本やJR東海のように、株式上場をステップに大きく飛躍した会社もある。他のJRにも増して独創的な経営を行ってきたJR九州だけに、上場すれば一段と変貌を遂げるに違いない。

(本誌:大坂直樹 =週刊東洋経済2011年9月3日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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