ミセス「コロンブス」炎上を"初歩的"と笑えぬ理由 初歩的なミス?文化や歴史認識のギャップはこうして起こる

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日本人にとって、原爆投下は忘れてはならない歴史的惨禍であるし、原爆が投下された、8月6日、9日は忘れてはならない日である。しかし、日本のことをよく知らない外国人が同様に考えてくれるかというと、別の話となる。

「認識の非対称性」を埋める取り組みを

このたびのMrs. GREEN APPLEのMVの件を、特殊な出来事として捉えるべきではなく、誰にでも起こりうることだと思ったほうがよい。

筆者は以前、沖縄に4年間住んでいたが、移住した直後のある初夏の日に海水浴に行こうとしたら、地元の人から「その日はやめたほうがよい」とたしなめられた。

その日は6月23日で「慰霊の日」だった。日本で言えば、終戦記念日の8月15日に当たるような日である。地元の方が筆者をたしなめたのは、「ご先祖様に引っ張られて溺死する可能性がある」という言い伝えに基づくものだったが、地元の人の中には、この日に浮かれ騒いでいる観光客を見て、好ましく思わない人もいるということを後で知らされた。

ミセスグリーンアップル
類人猿に馬車を引かせるシーン(写真:『Mrs. GREEN APPLE』公式YouTubeより引用)
ミセスグリーンアップル
類人猿にピアノを教えたりする場面も(写真:『Mrs. GREEN APPLE』公式YouTubeより引用)

気を付けているつもりでも、人と人との間の「認識の非対称性」を埋めることは実質的に難しい。特に、グローバル化が進めば進むほど複数の「非対称性」が生じてくる。

事前に複数の目でチェックする過程を経る必要があるように思う。少なくとも、表現面でのリスクに詳しい専門家と、(できれば多文化・他民族で形成される)視聴者モニターのチェックを経るようにしたほうがよいのではないかと思う。

今回に関しては、コカ・コーラ社はMVを事前に見ていなかったということなので、そこでチェック機能が働かなかったのはやむをえない。なお、誤解もあるようだが、MVとCM映像は、楽曲は同じでも映像は全くの別物である。CMの場合は厳しい考査が入るため、MVと同様な表現で放映されることは、まず考えられない。

テレビ局側も問題に気付かず放映してしまったようだが、一般にテレビ局は自局で制作した映像はチェックを行うが、外部制作の映像はチェックが手薄になりがちのように思える。

MVについて、テレビ局や広告会社などのチェック技術を持つ企業が助言する、あるいはそれらの企業が主導してチェック機能を持つ組織を作るなどの対応が、中長期的には求められるのではないかと思う。

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西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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