ミセス「コロンブス」炎上を"初歩的"と笑えぬ理由 初歩的なミス?文化や歴史認識のギャップはこうして起こる

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1点目だが、コロンブスに対しては、歴史的な評価は近年大きく変わってきている。筆者が中高生の頃(30年以上も前のことになるが)のコロンブスは、歴史の教科書にはそこまで書かれていなかったと記憶しているが、「アメリカ大陸を発見した偉大な人物である」という認識が一般的だった。

筆者の手元には、2010年時点の山川出版社の世界史の教科書があるが、コロンブスについてはバハマ諸島に「到達した」あるいは「上陸した」と記述されており、最後までこの地を「インドだと思い込んでいた」と説明されている。

現在では、コロンブスの侵略者、奴隷商人としての側面も知られ、問題視されるようになっている。2020年のブラック・ライブズ・マター運動においては、コロンブスは先住民虐殺、アメリカ大陸の植民化のきっかけを作った人物として、各所で銅像の破壊、引き倒しが起きた。

念のために言っておくと、Mrs. GREEN APPLEの楽曲の歌詞は、負の歴史を肯定するような要素は入っていない。ただ、上記の経緯を知っていれば、2020年代において、コロンブスという人物を取り上げること自体がリスクであることは、すぐに理解できたはずだ。

2の表現に関しては、アーチスト側は差別的な意図、負の歴史を肯定する意図はなかったとしている。歴史上の人物が時を越えて類人猿と出会い、ホームパーティーをするというストーリーだったとしている。しかしながら、西洋人に扮した3人が、類人猿に文明を教えたり、人力車をひかせたりするシーンなど、映像で描かれていた世界は、見る側からすると、どうしても先住民支配と重なって見えてしまうことは否めない。

今回については、6月13日の朝には、民放各局の番組内で、MVの映像とともに新曲を好意的に紹介していた。アーチスト本人だけならともかく、テレビ局、あるいは所属事務所やレーベルなどの関係者が問題に気付かなかったのか? という疑問も湧いてくる。MVの制作、配信の段階でチェック機能が働かなかったことも大きな問題だろう。

ミセスグリーンアップル
(写真:『Mrs. GREEN APPLE』公式YouTubeより引用)
ミセスグリーンアップル
(写真:『Mrs. GREEN APPLE』公式YouTubeより引用)

同様の問題は過去にもあったし、これからも起こりうる

日本において、広告やプロモーション関連で歴史認識や人種問題で物議を醸す場合、制作側が意図して政治的なメッセージを込めることは、ほとんど見られない。大半は、今回のように認識や配慮が足りなかったというものだ。

日本は島国であり、大陸各国と比べると人種的多様性も少ない。歴史や文化に対する認識のギャップに気づく機会が、相対的に少なくなりがちだ。

一方で、海外でも類似のことは起きている。

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