M&A仲介大手「全社株価急落」の深い理由 高額手数料や悪質ダイレクトメールにメスも

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M&A総研もM&A仲介協会の加盟社だが、自主規制では禁止事項として「相手方を譲り受けることについて関心・興味がある企業の存在を確認していないにもかかわらず、当該企業が存在する又は当該企業から依頼を受けていると偽り又はそのように誤認させるもの」と定めている。

M&A総研は「譲り受けに強い関心を示す“可能性がある”弊社クライアント企業をご紹介させてください」という文言で案件を持ちかけているとされ、これが前述の禁止事項に照らして「ギリギリ」の部分なのだという。

背景に紹介案件のパイプの弱さ

M&A仲介では、紹介料を払って金融機関や会計事務所などから案件を紹介してもらう「紹介案件」と、仲介事業者自らが案件を獲得しに行く「ダイレクト案件」の2つがある。

老舗の仲介事業者は金融機関などとのネットワークを築いてきたことで紹介案件を獲得しやすいのに対して、2018年設立のM&A総研はそのパイプが弱い。それゆえ「着手金や中間報酬を取らない完全成功報酬の料金体系」という新たなビジネスモデルのもと、ダイレクト案件を軸に事業を急拡大してきた。

業界内には、こうした「ダイレクト案件への収益依存が強引な営業活動につながっているのではないか」という声もある。ある仲介事業者幹部は、「メッセージを送付するコンサルタント任せにしてしまうと過剰な表現になりがち。当社ではコンサルタント以外の管理部員が、メール履歴などから買い手の実在などをチェックしている」と話す。

とはいえ、ダイレクト案件での強引な営業活動は業界全体の課題とも言える。「仲介事業者が郵送するダイレクトメールが、仲介事業者に届くことすらある」(同)といい、こうした実態は仲介事業者が手当たり次第に案件を持ちかけている証左とも言える。

この営業手法のベースになっているのが高額な企業データだ。「企業調査会社などから『後継者不在』や『株式が分散している会社』などM&Aの成約確率が高い会社のスクリーニングデータを数百万円で定期的に買い集めて、登録住所に一斉にダイレクトメールを送りつけている」(業界関係者)という。1つの成約案件で数千万の報酬が入ることが珍しくないため、数百万円の費用も簡単に回収できてしまう構造にあるわけだ。

中企庁が5月31日に開催した中小M&Aガイドライン見直し検討小委員会では、相手方が広告・営業を受けることを希望しない意思表示をした場合には、広告・営業を禁止するといったことも検討されている。

新たな規制をめぐる不安材料はあるものの、仲介事業者の株価は持ち直しの動きに転じており、株主にとっては成長が続く期待銘柄である点は変わらない。6月18日には仲介事業者のインテグループが東証グロース上場を予定している。

事業承継関連のM&Aニーズが高まる中、仲介事業者の持続可能な成長を維持するためにも、業界の健全化が求められている。

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当を経て、現在はM&Aや金融業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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