米国IPOの古くて新しい主役“ドットコム銘柄” 2000年のネットバブル再燃はあるか?

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今のところ、ほとんどのアナリストは次のように見ている。ドットコム銘柄に対する根拠なき熱狂の可能性について懸念があるのはもっともな話だが、かつてのドットコムバブル的なものが投資家の意思決定に影響を与えているかというと、その証拠にも乏しい。

たとえば、いくつかのドットコム銘柄は過大評価されてはいるが、S&P500の技術関連セクターのPER(株価収益率)は14.1倍と、02年3月以来最低の水準にある。07年12月には25.4倍、2000年のドットコムバブル崩壊直前には66.4倍だった。

一方、ドットコム銘柄を支援するITインフラは、10~15年前より格段に広がっている。ウェブ利用者数は相当に増加しているし、AmazonやEbay(イーベイ、世界的なネット商取引サイト)などによる流通革新だけでなく、さまざまな商用アプリケーションが普及している。

そのほかにもドットコムセクターがバブル化する危険を抑制するファクターが働いている。ドットコム系のスタートアップ企業は、90年代よりも非公開企業として活動する期間が長くなっており、株式市場に公開される前に、現実的なビジネスプランをもとにした事業基盤をつくることができている。オンライン広告や電子商取引も、正当な収入源として認められるようになっている。

また、新しい規制や金融革新により、公開前のドットコム銘柄に対して、投資家が資金を投じたり回収したりする手法が生まれており、ドットコム企業の創業者や経営者が無理をして株式公開を急ぐ必要がなくなっている。
 
 これまでベンチャー企業は、周囲から株式公開をせかされる傾向があった。成長資金を獲得するという必要があるほか、創業時に支援の手を差し伸べたベンチャーキャピタルに対して高収益で報いる必要があった。

投資家のほうも、90年代にはドットコムというラベルが付いてさえいれば衝動的にカネをつぎ込んだものだが、現在は自らの先見性をもっと重視するようになっている。

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