「怠けられる」人が勤勉な人より成功する納得理由 「怠惰」のおかげで誕生したミュージカルもある

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オーガスト・ストックウェルは、メンタルヘルスの専門家を育成する団体、Upswing Advocates(アップスウィング・アドボケーツ)を運営している。

自閉症、ADHDなどの発達障害がある人やLGBTQ+のニーズに合う専門家を育成する組織で、オーガストは大量の事務仕事、打ち合わせ、電話会議などに多くの時間が取られ、責任も重大だ。

クライアントとの問題について心理士やカウンセラーを叱責しなくてはならないこともあり、心理的負荷も高い。

何年もこうした激務を続けた結果、本人のメンタルヘルスが犠牲になっていた。「あるとき、いつも気が張っていて不眠気味だなって気づいたの」とオーガストは言った。

「職業人としてうまく一線を引けなくて、何にでも、はい、やりましょうと返事をしていた。どれもすごくいいプロジェクトだったからね。でもその結果、自分を疎かにしてた」

サボった行動から学ぶこともできる

オーガストは長年、大きな問題を解決することを最優先にしてきた。とにかく大きなトラブルから順に対処していた。けれど、行動分析のプロとしてその手法を自分の仕事に応用し、業務管理法を改善したという。

オーガストは、週次の業務管理、目標管理に使うスプレッドシートを見せてくれた。そこには仕事以外の項目もある。恋人との時間、瞑想、散歩、家族に電話する時間を作る、という欄もあった。オーガストの人生にとって大切なものはすべて、そのスプレッドシートにまとまっていた。

スプレッドシートの右側には、その週の達成状況を書く欄がある。会議に出たか、予定通り友達と電話できたかなどだ。さらに、それぞれの目標達成状況について、自分の感情を書き込む欄もある。

このスプレッドシートを見れば、いつも飛ばしてしまう目標が何かわかるし、できなくてどう感じたかも一目瞭然だ。

目標を達成できなかった自分を責めるのではなく、やる気のなさや怠惰によってどうなったのかを観察し、怠惰から教訓を得ることが重要だ。

たとえば、家事の目標を達成できないことが多いけれど、自分がそれを気にしていないなら、家をピカピカにすることは自分にとってさほど重要ではないとわかる。

それなら、本当に価値を感じる新しい目標を設定すればいい。目標のすべてを達成できなくても落胆する必要はないのだ。

「この作業で、他の人のことばかりでなく、自分について考えて、自分の経験や感情を意識できるようになった」とオーガストは言う。

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