老朽化する「街の図書館」を町民主導で素敵空間に 東京・瑞穂町 テラスで日光浴、おしゃべりもOK

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もちろん町民全ての願いをかなえられたわけではありません。ですが、一つひとつ耳を傾け、願いを実現することで、町の人にとって「居心地のよい場所」が生み出されたのです。

こうした街の人との意見交換では、新たなコミュニティも誕生しました。それが「図書館ファンクラブ」です。集まった10名ほどのメンバーは、図書館のスペースを使って、イベントの企画や運営を担っているのです。こうした積極的に関わってくれる街の人が増えたことで、図書館は活気にあふれるようになりました。

ワークショップ
この日は反物の端切れを使って、ブックカバーをつくるワークショップを行っていました(写真撮影:片山 貴博)

ファンクラブのメンバーの一人である村上豊子さん。彼女は腹話術の人形をあやつり、語り部をしています。この日は相棒である人形の「くりちゃん」とともに、図書館に足を延ばしていました。リニューアルした図書館のことをこう話します。

「これまで町の人は、地域活動の場所が限られていたんです。こういった場所ができて、積極的にイベントができるのはうれしいですね。子どもたちと接する機会が増えたことも喜びの一つです」

腹話術
村上さんの相棒、腹話術人形の「くりちゃん」とともに(写真撮影:片山 貴博)

本を手にしたら、新しい発見がある書棚を目指す

リニューアルのもう一つのテーマは、書籍の配置の見直しでした。ここでは、テーマ配架が取り入れられたのです。テーマ配架とは、日々の暮らしに近いテーマや地域に根ざしたテーマなど、瑞穂町独自の6つのテーマで本を分類して並べることです。

図書館といえば日本十進分類法(NDC)での区分が知られているところ。例えば「文学」「哲学」「産業」などと聞くと、誰もが思い出すかもしれません。しかし、瑞穂町図書館ではその分類の根底を残しつつも、とらわれすぎない独自の6つのテーマを設定したのです。

例えば生活を豊かにする本が並ぶ「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)」や、瑞穂の地域について学ぶ本が並ぶ「みずほ学」、10代の若者に寄り添ったテーマの本「ティーンズ」などといったセグメントです。

訪れる人の目的や興味で本が探せる配置になっています。司書たちはこの6つのテーマに沿って、自らが選書や配置をしているのです。そのスタイルは、まるで、独立形書店のようでもあります。

瑞穂町図書館
瑞穂町の歴史や、瑞穂町にある企業にまつわる本が集められた「みずほ学」コーナー(写真撮影:片山 貴博)
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT