乳酸菌ブームの主役「ヤクルト1000」に成長の壁 増産投資も実施、今後は生活必需品になれるか

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それでも結局、販売本数は計画に届かなかった。ヤクルト本社の大濱弘和・広報室 IR室長は「増産で一気に顧客を獲得する計画だったが、簡単ではなかった」と肩を落とす。

宅配品の営業はこれまで、主に既存顧客へアプローチして伸ばしてきた。さらなる成長には、接点のない新規顧客にも働きかける必要がある。「新規顧客の獲得には時間がかかるとわかった。ヤクルトレディの教育を見直し、体制を整える。着実に価値の訴求をして、少しずつ売り上げを上げていきたい」(大濱室長)

店頭品も出荷した商品がすべて売り切れる状態だった。増産を経て、今後は積極的な販促を打ち出す。継続的に飲用してもらうための6本パックの配荷や、コンビニでのキャンペーンの実施、給食といった新チャネルへの配荷など、多方面の取り組みで数量を伸ばす構えだ。

今2024年度の数量目標は宅配品が1日当たり230万本(前期216万本)、店頭品が130万本(同102万本)だ。富士小山工場も6月12日からフル稼働状態に入る。増産効果を発揮するためにも、営業の強化が焦点だ。

ブームから必需品にシフトできるか

乳酸菌飲料で大きな利益を上げてきたのは、日清食品グループの日清ヨークも同じだ。機能性表示食品である「ピルクル ミラクルケア」のヒットが続いている。主力商品を安定的に供給するため、一部商品は休売を余儀なくされるほどだった。

好調を背景に、ピルクルシリーズも生産体制を増強する。今春に埼玉の関東工場のラインを増設。さらに2025年春には兵庫県の関西工場のラインを増設する。増強後の生産能力は約2倍になる予定だ。

「多様なラインナップ展開や昨今の乳酸菌飲料市場の活況で、ピルクルシリーズの販売数量は増加している。(生産体制の増強で)さらなる需要の拡大に対応していく」(日清ヨーク)

大ブームとなったヤクルト1000シリーズやピルクル ミラクルケアは、メーカー側が積極的に働きかけずとも売れる商品だった。だが、最近では小売店の棚や自販機に安定的に並ぶようになり、業界では「ブームは一段落したのでは」との声も聞こえてくる。

増産投資を行う以上、増産分も確実に売りさばく必要がある。メーカー側も積極的なマーケティングを仕掛け、新たな消費者をつかむ段階にきているのだ。

乳酸菌飲料は、消費者に効果を実感してもらうため、各メーカーが毎日飲み続けることを勧める商品だ。一過性のブームでなく、必需品として消費者の生活へ定着させられるかが、さらなる成長のポイントとなりそうだ。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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