「大麻常用」がアルコールを上回った米国の大誤算 「大麻合法化で飲酒被害軽減」の理屈は崩壊
この研究に関与していない複数の専門家は、懸念すべき内容の研究結果だと話している。シアトルにあるワシントン大学精神医学科のベアトリス・カルリーニ特任准教授は、大麻合法化を支持する人たちは、大麻が広く入手可能になることで人々をアルコールの害から遠ざけることができると主張してきたと言う。
しかし、今回の研究のデータでは、頻繁なアルコール摂取は微減にとどまっており、思惑どおりにはならなかったことを示唆している。
「がっかりの結果だ」とカルリーニ氏は言った。
カルリーニ氏ら専門家は、マリファナに含まれる精神活性成分「THC」の濃度が年を追って劇的に増加していると指摘した。
1995年当時、アメリカ麻薬取締局が押収した大麻のサンプルに含まれるTHC濃度は約4%だったのに対し、2021年には約15%となっていた。現在の大麻製造業者はTHCを抽出してオイル、食用品、ワックス、砂糖サイズの結晶、「シャッター」と呼ばれるガラスのような製品を生産しており、それらのTHC濃度は95%を超えることもある。
大麻使用の増加で増える精神疾患
過去10年にわたり、大麻の頻繁な使用、とくにTHC濃度が10%を超える強力な大麻製品の使用が、統合失調症などの精神病性障害を発症する危険因子となることが研究で示されてきた。
「しかし、だからといって、月1回や年1回に使用頻度を下げても、必ずしも安全というわけではない」と、ハーバード大学医学大学院の精神医学准教授で、マサチューセッツ州ベルモントのマクリーン病院で精神科医を務めるマイケル・マーフィー博士は言う。
「若者の大麻使用率が高くなっていることから、精神病性障害の発症率も高くなることが予想される」と同博士は述べた。