「マトリ」に息子の薬物証拠を提出した父の覚悟

逮捕される息子を見て泣き崩れる親の胸の内

ネットを利用した薬物密売は巧妙化されている。薬物を撲滅するにはどうすればいいだろうか?(写真:Ushico/PIXTA)

ネットの普及により、薬物はより普通の人、普通の子どもにも身近な存在となっている。しかも、ネットは未だ進化・拡大の途上にあり、薬物犯罪1つ捉えても今後、ますます脅威が増すことは疑いようがない。

われわれマトリが、こうしたネット犯罪と真剣に向き合うようになったのは1996年頃である。ネットを媒介とした薬物事犯が、水面下で徐々に広がりを見せ始めた時期だ。拙著『マトリ 厚労省麻薬取締官』の中から、印象深い事例を紹介する。

彼の部屋に踏み込むことになった

事件は、大学2年生の息子Wを持つ母親の相談から始まった。地域の集まりで、麻薬取締官による薬物乱用防止講話をたまたま聞いた彼女。そこで耳にした覚醒剤乱用者の症状が、「最近の息子の言動と似ている」と感じたらしい(前回の記事『「息子の様子が変」マトリに駆け込んだ母の苦悩』で事件のあらましを紹介している)。

両親からの相談を受けたわれわれマトリは、彼らの息子Wがネット経由で覚醒剤を入手し、使用しているという確証を得た。父親から提供されたWの部屋にあったアルミ片、ストロー、ポリ袋からも覚醒剤が検出され、さらに彼のもとに新たに覚醒剤が届いたことも判明。令状を取ったうえで、われわれは彼の部屋に踏み込むことにした。

その朝、ドアをノックしたものの反応はなし。やむなくドアの鍵を破壊して中に入ったところ、Wは呆然と立ちすくんでいる。われわれの身分と来意を告げても、なかなか事態をのみ込めない様子だったが、まもなく、

「汚ねぇ! おまえらがチンコロしたのか。こそこそしやがって! 覚えてろよ!」と目をむいて喚きながら、父親につかみかかった。強面の捜査官が割って入り、「おい! 自分のやってることがわかってんのか! ええっ!」と一喝する。

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