「マトリ」に息子の薬物証拠を提出した父の覚悟 逮捕される息子を見て泣き崩れる親の胸の内

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「エス以外にもハッパ(大麻)でも何でも売っている。まずいとは思ったが、1年ほど前に思い切ってメールでエスを注文してみた。すると、宅配便で届いたのは背表紙のある書物だった。首を傾げながらページをペラペラとめくったら、小さな袋に入ったエスが挟み込まれていた」

薬物の代金は、メールで知らされた銀行口座に振り込む。その後、口座番号は何度か変更されたが、入金はつねに銀行振り込みだった。また、Wは薬物の使い方をネットで学んでいる。Wはそれによって、集中力が増して、ストレスも発散できたという。それではまってしまったのだと。

「セックスの際に興奮が高まると聞いていたので、彼女と一緒に使ってセックスしようとも思い、エスということを隠して煙を吸うよう彼女に勧めた。吸煙が嫌ならジュースに溶かして飲め、と無理強いしたこともある。

しかし、彼女は、『これやばいクスリでしょう。エスじゃないの。どうして? バカじゃないの? いったい、私を何だと思ってんの? 絶対に嫌!』と激怒。以来、関係が冷え込み、疎遠になってしまった。

彼女はとても優秀で気丈な性格だった。悪いことをしたと後悔している。言い逃れになるけど、自分はエスで頭の中が壊れていた。エスをやって興奮して、いやらしいことばかり考えていた。両親や彼女には本当に嫌な思いをさせた……」

ネットですべて完結

捜査官が「なんでこの部屋にエクスタシー(MDMA)と、未使用の注射器があるのか」とただすと、

「エクスタシーは、“セックスに効く、とくに女には効果てき面”とネットの掲示板に書いてあったので、半信半疑でエスと一緒に10錠くらい買った。結局、彼女は会ってくれないので、飲ませることができなかった。自分で飲んだら、エスと同じような興奮効果があって、同時にハッピーな気分になった。

それに、耳の感覚も変化して、音楽が鋭敏にというか、音の粒子が細かく聞こえる。でも、効果が切れてくると、どうしようもない不安感に襲われ、憂鬱な気分が続く。とにかく後味が悪いから、自分はエスのほうが好きだ。注射器は一度注射でやってみようと思い買ったもの。でも、怖くてやれなかった」

ネット以外で、例えば若者を手玉にとって販路を拡大したイラン人グループから薬物を手に入れたことはないかと聞くと、

「自分はネットで買っただけ。イラン人が路上で密売しているのは聞いたことがあるが、怖くて行けない。それに外では警察官に職務質問されたり、逮捕される可能性もある。自分の友だちにもエスをやっている人間は1人もいないので、すべてネットで買った。

ネットは相手と会う必要がないので、ネットショッピングと同じ感覚で注文できる。薬物の購入代金は、自分の貯金と母からもらったお金を当てていた。1年ほどで200万円以上は使ったと思う」

おわかりいただけただろうか。Wは覚醒剤を入手するまでに誰とも直接会っておらず、使用方法も知人から教わったわけではない。もし銀行振り込みもネット上で済んでしまえば、部屋から1歩も出ることなく薬物を入手できてしまう。イラン人密売グループとは異なる、新たな密売システムの出現である。無論、現在ではネットを利用した薬物密売がさらに巧妙化していることは言うまでもない。

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