「息子の様子が変」マトリに駆け込んだ母の苦悩

覚醒剤乱用者の症状が「最近の息子と似てる」

薬物はネットの普及により誰でも入手できるようになり、薬物犯罪の脅威が増しているという(写真:Satoshi KOHNO/PIXTA)

2019年はピエール瀧や沢尻エリカなど、有名人、芸能人が薬物所持や使用で逮捕された。こうした事件を受けて、薬物の恐ろしさが伝わることはいいことなのだが、一方で、これらが「セレブ」たちの遊びにすぎない、といった間違った認識が広まることは歓迎できない。

ネットの普及により、薬物はより普通の人、普通の子どもにも身近な存在となっている。しかも、ネットはいまだ進化・拡大の途上にあり、薬物犯罪1つ捉えても今後、ますます脅威が増すことは疑いようがない。

われわれ麻薬取締官(通称:マトリ)が、こうしたネット犯罪と真剣に向き合うようになったのは1996年頃である。ネットを媒介とした薬物事犯が、水面下で徐々に広がりを見せ始めた時期だ。拙著『マトリ 厚労省麻薬取締官』の中から、印象深い事例を紹介しよう。

マトリに相談に来た母親

事件は大学2年生の息子Wを持つ母親の相談から始まった。地域の集まりで、麻薬取締官による薬物乱用防止講話をたまたま聞いた彼女。そこで耳にした覚醒剤乱用者の症状が、「最近の息子の言動と似ている」と感じたらしい。

彼女の息子は幼少期から優等生で、補導歴などもいっさいない。それでも、どこかスッキリとしない思いを抱えていた彼女は、息子が薬物と無縁であることを証明したい一心でマトリの門をたたいた。

具体的な相談内容は以下のようなものだった。

「このところ、1人息子の様子がおかしいんです。もともとは勉強が好きな穏やかな性格で、友人もまじめな子ばかり。クラブやサークルには入っていないし、不良仲間とつるんでいる様子もありません。それなのに、ここ半年は大学に登校した気配もない。以前は同級生の恋人が訪ねてきましたが、最近はまったく顔を見せません」

次ページ「とにかく気分の変化が激しい」
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • 買わない生活
  • グローバルアイ
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激動相場に勝つ!<br>株の道場

6月18日発売の『会社四季報』夏号が予想する今期業績は増収増益。利益回復に支えられる株価が上値を追う展開になるか注目です。本特集で株価が動くポイントを『会社四季報』の元編集長が解説。銘柄選びの方法を示します。

東洋経済education×ICT