「息子の様子が変」マトリに駆け込んだ母の苦悩 覚醒剤乱用者の症状が「最近の息子と似てる」
父親は落胆しながらもうなずいた。母親はうなだれたままだ。ショックを隠し切れない母親に代わって、父親が切り出した。
「昨夜、息子が妻に絡んできました。“ケーキ買ってこい”“学校に電話しただろう”と訳のわからない言いがかりを始め、無視する妻の肩を背後からつかもうとしました。さらに、止めに入った私を突き飛ばし、壁にコップを投げつけながら部屋に閉じこもってしまいました。妻のことを『ババァ』と呼ぶようになるなど、本当に人が変わったみたいで……。
息子が覚醒剤に手を出していたなんて本当にショックですが、捜索でも何でもやってください。病院へは行かないと思いますし、入れてもまた繰り返すでしょう。一罰百戒。本人にきちんと反省させたうえ、立ち直らせたいです」
相談者宅に踏み込んだ
翌朝、Wの部屋から見つかった品々の鑑定結果が出た。われわれの予想どおり、アルミ片、ストロー、ポリ袋のいずれからも覚醒剤の成分が検出された。
捜査員から電話で結果を伝えられた父親は、「……わかりました。息子はあれ以来部屋に閉じこもったきりです。捜索はいつでも構いません。それと昨夜、また、息子宛に宅配便が届き、本人が受け取っています」。
それを聞いた私は、直ちにガサを打つことを決めた。
「ブツが届いた。明朝やる」
捜査員にはそう指示を出した。慌ただしく令状請求の準備が始まり、夕方には裁判所から令状の発付を得る。そして翌朝、閑静な住宅街にある相談者宅に踏み込んだ。Wの部屋は2階の一室で部屋の中から施錠されている。ノックして声をかけてもドアは一向に開かない。仕方なく、われわれマトリは父親の承諾を得て鍵を破壊した。
結局、数袋の覚醒剤に加えてMDMA、大麻、大量の睡眠薬などが見つかったのだ。
このように、ネットの普及により、薬物は芸能人だけでなく普通の人にも、身近になっている。Wの場合、母親が息子の変化に気づき「もしかして」とマトリに相談したこと、父親も覚悟を持ったことで、早い段階で気がつき逮捕することができた。詳しくは次回記事に譲るが、最終的にWは周りの人のサポートを得ながら更正していく。
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