島津製作所が「大麻合法化」で注目されるワケ 北米を中心に、ある分析装置の需要が広がる
北米を中心に海外で広がりつつある大麻の合法化。カナダでは2018年10月に大麻が合法化されたほか、アメリカでも同年12月に連邦議会が「ヘンプ」と呼ばれる産業用大麻を合法化する法案を可決した。
これをビジネスチャンスと捉え、大麻ビジネスに参入する企業が増加している。「コロナ エキストラ」などを販売するアメリカの大手飲料会社コンステレーション・ブランズはカナダの大麻栽培販売会社キャノピー・グロースに出資しており、カナダで大麻入り飲料の販売を検討している。
アメリカの大手たばこ会社アルトリアは2018年12月にカナダの大麻事業者クロノスに18億アメリカ・ドル(約2010億円)を出資し、大麻産業への参入を本格化させる。
このような動きが活発になる中、ある日本企業に注目が集まっている。分析・計測機器大手の島津製作所だ。大麻の成分分析を可能とする同社の分析装置への需要が高まっている。
大麻合法化が広がる2つの理由
実際、島津製作所の分析装置がアメリカやカナダなどで売上高を伸ばしている。北米における計測機器セグメントの売上高(2018年4~12月)は前年同期比で約10%増加。2017年度も前期比15%増と、成長が続く。島津製作所のIR担当者も「カナビス(大麻)向けの分析装置の需要が売り上げ伸長の背景の1つだ」と説明する。
とはいえ、なぜそもそも北米では大麻合法化の流れが広まっているのか。1つは医療分野で大麻の効能に関する研究が進んでいるためだ。大麻に含まれている複数の成分が鎮痛作用やけいれん、緑内障などに効果があるとされ、世界保健機関(WHO)での実証も進んでいる。もう1つの理由は犯罪組織などによる密輸や密売が後を絶たず、むしろ合法化して国家が正式に管理したほうが乱用されないと考えられたからだ。
合法化されたことで、これまで品質基準がなかった大麻に公的な基準が定められ、有効成分や農薬、重金属の有無などの安全性を調べるための分析装置が必要になった。その中で、島津製作所に注目が集まったのは同社の高い分析技術に定評があったからだ。同社は過去に質量分析技術でノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏を輩出するなど、あらゆるものに対する分析力の高さを売りとしている。
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