保険に潜む確率論、くれぐれもご注意を! 日本人は歴史的に確率論に弱いのか?

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保険は高度な確率論によってつくりあげられた金融商品です。保険会社にはアクチュアリーと呼ばれる数学の専門家がいて、保険数理に基づく精緻な確率論で保険商品を設計しています。だから保険には構造的にどうしても確率論の落とし穴が内包されています。これが保険に対する多くの勘違い、偏った思い込みを生んでいます。

日本人は歴史的に確率論に弱いのか?

日本人の多くが「保険は分からない」ものと考えています。その理由のひとつに、日本人は欧米人と比べて確率論的な思考に弱いからだ、との説があります。

関孝和の名前は歴史の教科書でご存じだと思います。江戸時代の「和算」を代表する人物です。彼の数学の学問的水準は、同じ時代を生きたニュートンやライプニッツに引けを取らぬものであった、と言われています。

しかし、その水準が西洋の微積分に匹敵するレベルにあったにもかかわらず、和算から確率論は生まれませんでした。確率論の考え方に興味を示さなかった、と言ったほうがいいかもしれません。和算はあくまで数字パズルを解く技巧にこだわり、西洋のような自然科学への応用がないまま、結局、社会とは孤立した存在で終わってしまいました。確率論を駆使してギャンブルを解き明かそうとした西洋とは大きな違いです。

このような文化、社会、民族性の違いが現在の日本にはまだ残っているため、日本人の確率オンチは今も続いていて、そのため「保険は分からない」ままなのだ、という説です。

交通事故で死ぬ確率はジャンボ宝くじが当選する確率の100倍以上だそうです。いつか当たるだろうと信じて宝くじを買い続けたとすると、確率的には当選する前に交通事故で死んでしまいます。これが確率論から導かれる答えです。

一方、日本人の75%は宝くじを買った経験がある、との調査結果があります。そのうちの多くの人が「夢」を買っているのだ、と答えています。時々、夢を買いたくなるのは人間らしい行動で何も問題ありません。しかし本気でいつかは当たると信じて買い続けている人がいるとすると、その人の行為は少なくとも確率論では合理的とは言えません。

保険でも同様なことが言えます。若いうちに保険に入ると保険料が安くなるので、早く入ったほうが得だ、と考える人がいます。確率的には若い人ほど死亡したり、病気になる可能性が低いのですから、保険料が安いのは当然です。

しかし、だから早く入ったら得をする、と考えるのは早計です。安くても結局は長い期間保険料を払い続けるわけですから、支払う保険料合計では損をします。保険が必要でない期間(若い時期)の分まで払ってしまうからです。年齢が若いと保険料は安いという先入観にとらわれて、つい勘違いしてしまうのです。

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