エアアジアが中部で国内線に再参入する意味

16年春に国際線と異例の同時就航へ

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昨年7月に開かれた新会社の発足発表会見(撮影:尾形文繁)

昨年7月の新会社発足発表会見で小田切義憲社長が候補に挙げていた羽田空港は、昼間帯(7~22時)の発着枠が満杯。将来的には、都心上空の飛行解禁に伴う発着枠の拡大はありうるものの、現時点で昼間帯の羽田に入り込む余地はない。

これらの事情から、3大都市圏のうち、残された名古屋に拠点を置く案が現実的な選択になったのだろう。

3つ目は、セントレアのある中京圏には急増する訪日外国人旅行客を招き入れる余地があるということだ。現状では、外国人旅行客は東京、大阪を目指して来日するケースが大半。この2大都市圏では、宿泊施設や観光バスなどのキャパシティに余裕がなくなっている。

実は今、中京圏では国交省中部運輸局の旗振りによる「昇龍道プロジェクト」という観光活性化策が進んでいる。セントレアを拠点とすれば、飛騨高山や名古屋城、伊勢神宮などといった観光資源を生かして外国人旅行客を呼び込もうとする国や地元自治体の協力が得られる。折しも2016年5月下旬の「伊勢志摩サミット」の開催が決まったばかり。世界的な注目が集まることは追い風となりそうだ。

4つ目は、今年2月に開港10周年を迎えたセントレアの低迷だ。2005年度こそ愛知万博の開催にも助けられ、1235万人の利用者を記録したが、2009年度以降は1000万人を割り込んだまま。この状況を打開する起爆剤が必要だったセントレアにとって、エアアジア・ジャパンの就航は渡りに船。つまり、さまざまな協力を得やすいというわけだ。

うごめく"第3極"の思惑

今年1月のスカイマーク破綻以後、日本の航空業界はANA、JALの2陣営に対抗できる“第3極”を事実上、失っている。スカイマーク支援には米デルタ航空が名乗りを挙げているものの、ANAとの争奪戦、またその後の再建の行方は予断を許さない。国交省航空局の一部には、エアアジアの再参入によって競争原理を今まで以上に働かせたいという期待もあるようだ。

ただし、道のりは平坦ではない。エアアジアは昨年末、インドネシアで墜落事故を起こしており、それに対してのネガティブなイメージはつきまとう。また、旧エアアジア・ジャパン時代には定期検査の一部を実施しなかったことで、国交省から厳重注意を受けるようなヒューマンエラーがあった。

安全性や定時性をしっかりと確保して、信頼を勝ち得ていかなければ、いくら運賃が安くても搭乗率は確保できない。「LCCだから安かろう悪かろう」ではなく、日本人が納得するサービス水準を確立できるか。捲土重来の可否は、その一点にかかっている。

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