ryuchellさんに面差しの似た「元女性」の歩む人生 12歳でトランスジェンダーを学び、早期に打ち明け
メノさんにはまた、学習障害もあるそうです。双子の妹と共に27週目に生まれた早産児でした。何かを学ぶ際には、何度も繰り返すことが必要だそうですが、メノさんは障害についても隠すことなくオープンでいるとのこと。「恥ずかしいことではないからです」「(障害と)ともに生きることを学びました」(メノさん・2022年フットネス会社とのインタビュー)
トランスジェンダーに寛容な国、というわけではない
そんなメノさんの暮らすニュージーランドは、トランスジェンダーの人たちにとって完全に寛容で、環境の整った国かといえば、必ずしもそうではないようです。
ニュージーランドは2021年末、性別と性自認を一致させるための医療的処置の証拠を提示しなくても、出生証明書に記録されている性別の変更を認める法案を可決しました。性自認の権利を護る法案として、概ね歓迎されています。
一方で、今月10日には「トイレへの公平なアクセス法案」が議会に提出されました。「正しくない」性別のトイレを使用すると、罰金刑が科されるという厳しいものです。提出したのは保守派のニュージーランド・ファースト党ですが、野党労働党党首はこの法案について「男女共有のトイレを使うと罰金を科すとでもいうのか?いったいどうやって取り締まるつもりだ?」と批判しています。
また緑の党は「この法案はトランスジェンダーの人たちに対する明確な攻撃」「ニュージーランド・ファースト党は自らの政治的利益のために、恐怖を広め分断を煽ろうとしている」と反発しました。
トランスジェンダーでない人たちに、いきなりそのことを理解してほしい、と望むことは難しいことかもしれません。ですが、私はヘイトの根本は恐れにあり、そして恐れは未知なるものに対する疑念や不安だと考えています。
性的マイノリティの人たちがそのことを隠す必要もなく、日常、自然に身近にいること、そして、彼・彼女たちを人として知ることで、その不安の一部は解消されていくのではないでしょうか。先に記したロンドンのジムのように多様な人たちが自然に共存する場や、メノさんのような人たちが自身の体験を共有していくことは、そんな道筋の一歩であるかもしれません。
メノさんは今も、インストラクターとして世界を駆け巡り、フィットネスを通じた喜びを広め続けています。「人々がどんな悩みを抱えているかは、他者にはわかりません。だから、(クラスが行われる)55分間は、自分が少しでも光を放てたらと思います」(メノさん)。
カミングアウトする前、メノさんはいつもどこか居心地の悪さを感じ、混乱した気持ちでいたと言います。
「自分のことを受け入れれば受け入れるほど、より心地よくいられるようになりました。 私はとても素晴らしい旅をしてきましたが、今も素晴らしい旅は続いています。 同じような経験をしていて、私ほどの支援を受けられない人たちに少しでも光を届けることができれば、嬉しいです」と、先のインタビューで語りました。
私が特に着目したのは、この大手フィットネス会社が先のインタビュー以外は、メノさんのセクシャリティをことさらに前面に出すことなく、メノさんを通常、単に一人のインストラクターとして紹介していることです。
日本のエンターテインメント業界ではとかく、性的マイノリティの人たちのセクシャリティをいまだにある種奇異なものとして見、そのことを「売り」にしているように感じられます。
性自認を隠す必要もなく、またそれをことさらに売りにするでもなく、人それぞれの特性として、ごく自然なこととして受け入れられる社会は、誰にも暮らしやすい場となり得るのではないでしょうか。
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