ピーチ躍進と切っても切れない関西人の気質 型破りな飛行機の使い方が和製LCCを育てた

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井上CEOの言葉を借りれば、それは「空飛ぶ電車」というピーチのキャッチフレーズに言い表されているかもしれない。電車のように気軽に飛行機に乗る。「遠方に行くのだから」「空港に行くのだから」「国境を越えるのだから」などと身構えるのではない。従来の飛行機に乗ってきた人が「今まで考えられなかったさまざまな利用の仕方」を生み出しているのだ。

具体的な例を挙げよう。2013年9月に就航した那覇-台北線。この便を頻繁に利用する台湾人女性客がいるそうだ。その利用目的を聞いて驚いた。彼女が台湾から国境を飛び越えて那覇にしょっちゅう来ているのは、あるお気に入りの美容室で髪を整えるためだという。

「ソウルで焼き肉を食べるため」ピーチに乗る

大阪のある中年女性は友人をちょくちょく誘っては、焼肉を食べるためにピーチの関空-ソウル(仁川)便を日帰りで往復する。同じく大阪在住の若者グループが最近、ピーチを利用してソウルへ出掛けた目的は、ソウルの焼き肉店で新入社員歓迎会を開くためだった。そのために、パスポートを携行して飛行機に乗って国境を越える。

ピーチの利用客でこうした例は枚挙にいとまがない。こうした「新しいムーブメント」を起こしたのは誰なのか。答えはピーチという航空会社ではない。従来よりも安い運賃で移動できるという気軽さを、利用客側が自分の事情やニーズと合致させて「型破り」な飛行機の使い方を生み出しているのである。井上CEOは「ライフスタイルを変えるためのツールとして、ピーチを使いこなしている」と表現する。

2012年3月に関西空港を基地に運航を開始したピーチは、現在では国際線、国内線で計19路線を運航している。2014年度の平均搭乗率は国内航空会社としてトップレベルの85.9%を記録した。また、就航2年目の2013年度(2014年3月期)にいち早く営業黒字化を果たし、この6月下旬に発表した2014年度(2015年3月期)決算でもさらに営業黒字幅を拡大した。

関空を拠点とするピーチのビジネスモデルは当初、多くの専門家から「失敗する」と酷評を受けていた。ところが同じく2012年に和製LCCとして、成田を拠点に就航したジェットスター・ジャパンは赤字に苦しみ、ANAとエアアジアの合弁でスタートした旧エアアジア・ジャパンは、エアアジアの一時撤退により、バニラエアとして再出発した。和製LCCの初就航から3年が経ち、勝ち組と呼べるのは今のところピーチだけだ。

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