ピーチ躍進と切っても切れない関西人の気質 型破りな飛行機の使い方が和製LCCを育てた

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ピーチが好調な理由として、最近のアジアを中心とした旺盛な訪日需要は外せない。ただ、見逃してはならないのは、ピーチがまさに「空飛ぶ電車」として利用者に受け入れられているということだ。それは井上CEOの言う「新しいムーブメント」に現れている。

そもそもLCCが日本において注目を浴び出したのは、2010年7月に春秋航空が茨城空港に就航、次いで同年12月に羽田空港でエアアジアXが運航開始した時期であった。これより以前にも、2008年のフィリピンのセブ・パシフィック航空、2009年には韓国のチェジュエア、そして2010年にジェットスター・アジア航空がそれぞれ立て続けに関西空港に乗り入れを開始するなど、アジアのLCCも乗り込んでいた。

これらのLCCは本来であれば人口の集中する首都圏マーケットをターゲットに、成田空港に乗り入れを希望したであろうが、当時の成田空港は発着容量が満杯状態。もしかすると、なかば不本意ながら関西空港に乗り入れた部分もあっただろう。しかし、関空に就航したことがかえってLCCにとってのメリットをもたらした可能性は否定できない。簡素なサービスで低運賃を提供する、というビジネスモデルが、関西人の気質にピッタリだからだ。

「せっかち」「おもろい」などが合致

よく言われる一般的な話は、東京人は高い価格で買ったブランド品を自慢するが、関西人はよさそうに見える品を安く手に入れたことを誇りにする。

「これいくらで買ったと思う?」

「・・・1万円ぐらいですか?」

「アホ! 3000円や!(ドヤ顔)」(編集部註:「アホ」には相手への愛情が込められている)

というようなやり取りだ。おカネの使い方に合理性を求める。そして、物事を急ぐ「せっかち」な人が多く、お笑い文化が根付き、日常会話でも「ボケ」と「ツッコミ」を交えるという「おもろい」→「面白い」ことを大事な価値観に置く。ピーチの利用者が、航空会社が考えもつかなかったユニークな使い方をしているのも、こうした関西人気質が根底の一つにある。

8月から運航開始が予定されている羽田-台北線のダイヤは羽田発5時50分、台北着8時30分で、帰路の台北発便は00時30分、羽田到着4時45分である。ピーチでは近々「チャレンジ!弾丸トリップキャンペーン」という早朝羽田発-終日台湾-早朝羽田着(翌日)の旅行プランを募集するそうだ。

はたしてピーチを初めて利用する人が多い、東京をはじめとする首都圏のピーチ利用者が、どのような「おもろい」旅のアイデア=「新しいムーブメント」を生み出すのだろうか。興味津々である。

森崎 和則 航空経営研究所 主席研究員

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1951年生まれ。1975年慶應義塾大学卒、日本航空入社。総務、広報などを経験。2007年から航空経営研究所。拓殖大学工学部講師(非常勤)。

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