消失危機!「輪島塗」は復活できるのか【前編】 能登半島地震で「甚大被害」職人を取材すると…

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つまり輪島塗は、輪島の土と輪島の人なしでは成り立たない。それが、この能登半島地震で壊滅的な被害を受けた。

輪島の街並み
輪島の街並み(写真:まちゃー/PIXTA)

輪島塗は「分業制」それぞれの専門家がいる

「震災前から輪島塗は存続危機でした。けれど、この震災でトドメを刺されてしまったかもしれない」

そう話すのは、塗師の赤木明登さんだ。

輪島に住んで35年。伝統の技術を踏襲しながら、現代の暮らしに溶け込む「日用品」としての輪島塗の器を作り続けてきた。

その研ぎ澄まされた美しいフォルムと、吸い込まれるような漆の質感を大切にした器には国内のみならず海外にもファンが多い。

塗師の仕事は文字通り“漆を木地に塗ること”だが、器のデザインを考え、木地師たちにイメージを伝えて器を作る総合プロデューサーでもある。赤木さんは現在6人の職人を抱えて器の制作をしている。

「輪島塗は分業制。僕らの仕事はひとりではできないのです。木地師がいなければ塗る器がありません。また、一言で木地といっても、指物(さしもの)、挽物(ひきもの)、刳物(くりもの)、曲物(まげもの)という4種類があり、それぞれ専門の職人がいます」と赤木さん。

また、彼ら職が作る木地は、材木から荒く削り出した荒型が材料になっていて、それらは荒型師という別の職人が担当するという。

「震災前の段階ですでにそれぞれの職人の数が激減し、技術継承の危機にありました。それが震災をきっかけに廃業や引っ越しを決めた人も多く、これから先の見通しはまったく立ちません」と穏やかな口調で、厳しい現実を語る。

赤木さん作の夫婦碗
赤木さん作の夫婦碗。椀を覗き込むと柔らかな光が月のように映る(写真:赤木明登)

ここで、輪島塗の職人数の推移を見てみよう。

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