気軽に「退職代行を使う人」が知らない残酷な現実 「便利」「ずるい」でなく、気になるのは「危うさ」

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ふだんこれらの行動パターンを取っている人であれば、退職代行サービスの利用に躊躇がなくて当然かもしれません。ただ、LINEのブロック、退会、別れ、リセットが繰り返しやすく、一度行うとハードルが下がるのと同じように、退職代行サービスの利用もハードルが下がるきらいがあります。

たとえば、まだ迷っている段階なのに、退職代行サービスを使って辞めてしまう。少し納得がいかないことがあるだけで、「退職代行サービスを使おう」と思ってしまう。

やっかいなのは、退職することのハードルが下がり、引いては「『合わない』と感じたものや嫌なものから条件反射的に逃れる」という行動がクセになってしまうこと。その結果、「自分に合う仕事、職場、上司や同僚などが見つからず、スキルも経験も積み上げられないまま、気づけば年齢だけ重ねていた」という事態につながりかねません。

本来、仕事に関しては「お金を稼ぐためには、これくらいはやったほうがいいのかな」「最低限、同僚や取引先に迷惑をかけないようにしよう」などの潜在意識があり、それが生きていく力として必要な耐性を養うことにつながっていきます。

辞め方によっては損害賠償の請求も

しかし、早期退職を気軽につづけ、耐性が養われない人は、プライベートでも苦労しかねないのが怖いところ。たとえば、家族、友人、恋人との関係性、健康や買い物などにおける耐性にも欠けてしまい、「危機を乗り越えられなかった」という人が少なくないのです。実際、筆者の相談者さんにも、「転職を繰り返し、恋愛・結婚もうまくいかない」という人は数え切れないほどいました。

さらに、一定の耐性がない人は、感情的になりやすくストレスを抱えやすいだけでなく、その状態が続くことで「生きていくことがつらい」「自分には本当の味方がいない」などと落ち込む傾向があるのも苦しいところ。もし大半の人が退職代行サービスを利用する時代になったら、個人は人と向き合えず耐性の足りない人が増え、企業は現場や人事などの課題改善という機会を逃しかねないでしょう。少なくとも、繰り返し退職代行サービスを利用する人は、「別のところで耐性を身につけよう」という意識が必要なのかもしれません。

そしてもう1つ、忘れてはいけないのが、「辞め方によっては企業から損害賠償請求を受ける」というケースもあり得ること。その場合、退職代行サービスがすべて対応してくれるとは限らず、「自分で弁護士を探して依頼した」という話を聞いたことがあります。

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