気軽に「退職代行を使う人」が知らない残酷な現実 「便利」「ずるい」でなく、気になるのは「危うさ」
これまでの取材経験上、人事担当者たちの中には「退職代行サービスの利用を快く思っていない」という人が少なくありませんでした。時間とお金をかけて採用し、先行投資する形で育成していたのですから、人事担当者がそう思ってしまうのは当然かもしれません。
また、「話を聞く余地なく辞めてしまう」ことを問題視しているうえに、社内で人事担当者の評価が下がったり、叱責されたりという事態が起こりうることも理由の1つでしょう。
「人事担当者には横のつながりがある」のは当事者間では知られた話ですし、特に同業種では「ネガティブな情報として共有されてしまう」というリスクを無視できません。どんなに売り手市場だとしても選ぶ権利は両者にあり、退職代行サービスを使って自分が相手との関係を絶った分、次の相手からも関係を絶たれやすくなってしまうところがあるのです。
企業側としては、退職代行サービスを使って辞める人が増えると、「退職者が増える→人手不足になる→労働環境が悪化する→ますます退職者が増える→ますます人手不足になる→ますます労働環境が悪化する」という悪いループにはまりかねないリスクがあるだけに、警戒されてしまうのは当然なのです。
「ブラック企業なら自業自得」というところもあるでしょうが、はたして本当に企業側だけが悪いのか。いずれにしても、退職のハードルが下がりすぎることは、「働きづらい企業が増え、世の中の活動が停滞してしまう」という危うさと紙一重なのです。
LINEの「ブロック」の感覚で使用されている?
退職代行サービスを利用する理由の中で、もう1つ大きいのは、「スパッと辞められる」こと。
「辞意を伝えてから退職までの間、気まずい雰囲気の中で働かなくていい」「退職の挨拶まわりや、お礼のお菓子を買うなどをしなくていい」。自ら「ここまで」と線を引くようにスパッと辞めたい人が多いようなのです。
そもそも「モームリ」への依頼は約9割がLINEで行われ、対面や電話は少ないとのこと。その行動パターンとしては、プライベートで「誰かのLINE IDをブロックする」「LINEグループから退会する」、あるいは、恋人への別れもLINEでする。人間関係リセット症候群にも似た行動パターンと言っていいでしょう。
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