苦労は絶えない一方で、女性は「仕事は楽しい」と言い切る。「子どもたちの、できなかったことができるようになった瞬間に立ち会えるのは、大きな感動がある。
怒りや悲しみも含めて、とにかく感情がすごく揺さぶられる。他の何にも代えがたい仕事だと思う」。誕生日に子どもたちがサプライズでお祝いをしてくれたことも忘れがたい。
「とにかく人手が足りない。教職は素晴らしい仕事だからこそ、もっと予算をかけて増員し、待遇も良くしてほしい。子どもたちの未来のため、です」
「これって教員の仕事なのか」
矛盾を感じながら、何とか踏みとどまっている教員がいる一方、教職に見切りをつけた人もいる。
関西地方の小学校に6年間勤めた30代男性は、数年前に教員を辞めた。26歳で採用され、毎年学級担任を務めた。いつもやる気にあふれ、何よりも授業に力を入れてきた。
子どもたちと向き合うことに、喜びを感じていた。勉強がわかったときのうれしそうな表情を見たとき、担当した子が卒業後に顔を出してくれたとき。
やりがいを感じる瞬間は何度もあった。子どもの学力を高めたい一心で、授業準備や教材研究を仕事だと思ったことは一度もなかった。土日も自宅でパソコンに向かった。
特に力を入れていたのが、英語教育だ。大学を卒業後、海外で働きながら英語力を養った。その経験から、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能をバランス良く養成するために、どうしたらいいかを考えた。
朝の時間に、さいころを振って出たテーマについて英語で話す活動も採り入れた。子どもたちは物おじせずに取り組み、力がどんどん上がった。
一方、仕事には疑問もあった。授業に関係のない業務が多すぎることだ。
放課後にはまず、校内の会議や研修、打ち合わせがある。それが終わると、事務仕事が待っている。代表的なのが、学校の庶務を教員が分担する「校務分掌」だ。
3年間担った「会計」では、遠足などにかかった費用を計算して精算書をつくり、全ての領収書を貼り、事務職員に提出するといった作業がある。提出後に「3円違っている」と指摘され、数日間かけて全ての数字をつきあわせ直したこともある。
疑問が募った。「これって教員の仕事なのか」。