21年12月中旬の土日の両方に長時間勤務したあと、学校に行けなくなった。うつ病との診断を受け、休職した。
男性教諭はいま、文科省の姿勢に疑問を感じている。
20年度からの小学校の学習指導要領では、英語の授業時数が増えたうえ、プログラミング教育や探究学習など、新しい要素も加わった。情報端末の導入やコロナの健康報告などやることはどんどん増える。
一方、この仕事をやめてよい、という指示はほぼない。やることを減らさないまま時間外勤務の削減は現場に押しつける。文科省の姿勢について、男性教諭にはそうみえる。「学習指導要領の改訂で授業時数を減らすなど、抜本的な対策が必要ではないか」と話す。
心の健康を失う教員が増えるのはなぜ
教員の働き方改革を支援するNPO法人「共育の杜」の藤川伸治理事長は、若手教員のなかで病休者の割合が高くなっていることについて「気安く相談に乗ってもらえる中堅が少ないうえ、若手教員の面倒を見たり相談に乗ったりする職場全体の空気が薄くなり、若手にしわ寄せがきている」とみる。
1971〜74年に生まれた第2次ベビーブーム世代が成長するのに合わせて大量採用された教員が近年、一斉に退職し、それを補う形で職場に若手が増えた。
現在の40代が新卒のころは特に採用が少なく、支え手が不足している状況だ。このため、若手に対して指導役になる中堅教員が少なくなっており、さらに多忙のためコミュニケーションの機会も減っているという指摘だ。
どうすればよいのか。
藤川さんは、教職員が信頼できる相談窓口を都道府県教委が設けたり、市町村教委が各学校に、教職員の健康について話し合う「衛生委員会」をつくるよう促したりといった取り組みが有効だという。
国には、病休者の割合が高い自治体と低い自治体との格差がなぜ生まれているのかや、なぜ若手教員に病休者が多いか、調査と分析が求められるだろう。
また、「各学校での、安全衛生に関する地道で優れた取り組みも掘り起こし、広めて欲しい」と話す。
長時間労働の問題に起因する「教職の敬遠」、つまり教員の「なり手の減少」は、教員不足という子どもの学びの危機につながり、特に若手で心の病に倒れる教員が増える背景にもなっている。
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