ポーランド政府が隠した、難民の「不都合な真実」 強制送還されるか、極寒の森の中を彷徨うか…
――この映画をつくるにあたり、政府や右派勢力からの妨害を避けるために、撮影も秘密裏に、24日間程度で急いで撮ったと聞きました。撮影中に危険性を感じることはなかったですか?
もともと政府がこの映画の製作に反対しているというのはわかっていたので、なるべくひっそりと撮影するよう進めていきました。
だから撮影を行ったのも実際の森ではありません。そもそも国境付近の森は撮影許可も下りないですし、国家所有の森林なので、足を踏み入れた途端に警察や警備隊がやってきて、何か言われるのは間違いなかった。
今回撮影した森は、ワルシャワに近い、いくつかの私有地の森でした。おっしゃる通り、24日間というかなりタイトなスケジュールで撮影をしたのも、そうした余計な注目を浴びないようにするためでした。
ただ最後のほうの国境の鉄条網のシーンはロケセットでつくったのですが、そのときは非常に不快な訪問者がやってきたり、非常に不快な記事を書かれたりはしました。彼らとそこまで深くやりあったわけではないので、無事に撮影を終えることはできたのですが、そういうことはありましたね。
ウクライナ侵攻に対して思うこと
――本作の物語の舞台は2021年の秋で、その翌年の2月にはロシアのウクライナ侵攻がありました。撮影もちょうどその頃に行われたということで、現実社会が地続きでつながっているという感覚があったのでは?
わたしが脚本を書き終えたのが2022年の1月。その1カ月後にはロシアのウクライナ侵攻があったわけですが、この2つの状況がつながっているというのはひしひしと実感しました。わたしたちが描いている映画というのはその一部なんだと感じました。
われわれ人間がどのぐらいその世界を理解できているのか、あるいは他国の人たちに対する理解度はどんなものなのかということを感じさせられる。
難民に関しても、白人であるウクライナからの戦争難民は受け入れるのに、中東の人たちはそうではなかった。肌の色が異なることで、なぜ対応に違いが表れるのか、そのことに疑問を呈する人はいません。だからこそエピローグには、ロシアの侵攻に関して言及することにしました。
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