TSMC・台湾半導体業界が大地震を乗り切った理由 サプライチェーンの強靱さとしなやかさが浮き彫りに
TSMCの49の上場サプライヤーの資料によれば、全体の営業額は1561億元(約7415億円)、およそTSMCの収益1.55兆元(約7.36兆円)の10%に相当。仮にTSMCが呼びかけているサプライチェーンの本土化と、長期的な利益などから計算すれば、2033年には2.66兆元(約12.64兆円)に達することになる。
むろん数字の検証は必要だが、QICの何柏傑氏は、台湾半導体サプライチェーンの潜在的価値はどんどん高まっているものの、外国資本の持ち株比率は7%に過ぎず、TSMCの75%に比べ10分の1に満たないと語る。
また、外国投資家はTSMCに対し4938億ドル投資しているが、サプライチェーンへの投資は47億ドルに過ぎないとも指摘している。つまりこれは現在の世界的なAIブームもあって、台湾企業には成長余地が十分にあると見ることができるのだ。
政府の支援でハイエンド設備の国産化を促進
近年、台湾政府はハイエンド半導体製造設備の国産化を推進してきた。中小規模が主体の台湾企業にとって、開発から収益が出るまであまり時間をかけられない。
そのため経済部工業局では2021年から、企業の研究開発や顧客の検収、認証取得までをサポートするプロジェクトをスタート。材料企業と共に次の10年を見据えた模索が始まっている。
そのような中で、業界で特に注目されているのが半導体を含む外国大手企業の台湾への直接投資と、国内企業との共同研究開発である。
岳俊豪氏は、台湾企業が世界のサプライチェーンに、確実に組み込まれるようになることが期待できるという。例えばオランダASMLが台湾で工場を開設すれば、台湾現地のさまざまな企業もサプライヤーとしてチェーンに組み込まれる。国内産業全体のレベルアップに大きく貢献できると考えているのだ。
また、TSMCの極端紫外線(EUV)サプライヤーである家登精密工業(Gudengプレシジョン・インダストリアル)を中心に発足した「台湾半導体ローカルサプライチェーン連盟」の動きも注目されている。現在、最大の目標は連盟企業のアメリカ進出であり、その後は日本や東南アジア市場も視野に入れているという。
国際半導体製造設備および材料産業協会(SEMI)が2024年1月に発表した世界のウエハー予想レポートによれば、2022年から2024年までに、82の新工場が稼働を開始し、その中で2023年には11工場、2024年には42工場が動き出すとしている。
サプライチェーンの現地化も進む中、台湾で鍛えられた国内企業はかえって世界に飛び出す千載一遇の状況にあるといえるのだ。
「私たちはゲリラ戦が得意だ」
崇越科技の郭智輝会長は台湾企業の臨機応変さをゲリラ戦と表し、台湾企業のさらなる世界進出に自信を見せている。
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