熊本県の調査で判明・TSMCは環境保護の優等生 台湾半導体産業が持つ環境保護供給網の実力

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熊本県で進むTSMCの工場建設(写真・共同)
半導体受託生産世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)熊本工場が間もなく完成する中、熊本県は調査チームを台湾に派遣。新竹サイエンスパーク、中部サイエンスパーク、およびTSMC Fab15を視察した。環境保護に厳格な熊本県は、パーク内半導体企業の取り組みに太鼓判を押したことで、台湾の半導体産業は世界有数の環境保護サプライチェーンを構築していたと言えるだろう。

 

2023年8月28日から3日間、熊本県の環境保全、排水、大気、工業用水担当者や県内の有識者が台湾の新竹や中部サイエンスパーク、TSMC Fab15を訪れ、環境(水質、大気等)状況について調査を実施した。県のホームページには以下の通り、調査理由を明らかにしている。

〈TSMC進出に伴い、半導体関連企業等の集積が進む中、熊本の発展に対する期待が高まる一方で、地下水や排水など環境問題に対する県民等の不安の声が寄せられています。そこで、TSMCをはじめ半導体関連企業が多く集積する台湾のサイエンスパークの現状を確認するため、本県の半導体産業集積強化推進本部の環境保全部会により、令和5年8月末に現地調査を行いました〉

「水の都」熊本が環境を守りたい理由

熊本県は過去に工業汚染によって大変な悲劇に見舞われた経験があり、環境や資源保護の点でとくに気を使っていると言われている。

熊本は「水の都」とも言われ、熊本市住民の生活用水は100%地下水を利用している。TSMCでは2023年8月に地下水の抽水テストを実施。1日当たり1.2万トンの工業用水が必要で、水位による変化で地元住民の生活に異常をきたすことはないとしている。

また大津町でも予行演習として、TSMCが1年間に採取する最大量の3分の1にあたる100万トンを超える地下水の涵養を実施。地元では世界的企業が来ることへの「期待」と、環境への影響に対する「危惧」という複雑な心理状況にあるようだ。

過去の悲劇とは「水俣病」のことだ。熊本県は、工業汚染につねに警戒心が強く、環境保護の取り組みに熱心だ。2013年、国連環境計画(UNEP)の「水銀に関する水俣条約」が発効。熊本県や水俣市が重要な役割を果たしたこともある。

熊本県の調査の対象は、環境保護優等生であるTSMCだけではなかった。2023年10月4日の調査報告書は「半導体関連企業集積に伴う環境への影響に関する台湾訪問調査の結果について」とあり、水の都、環境首都の人々が台湾の半導体各社に対して総合的なストレスチェックを実施したと考えられる。

報告書では、「台湾よりも厳格な日本の基準に照らし合わせても大多数の項目で合格」という考えが根底にあり、台湾の半導体企業がテストに合格したことを意味している。

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