TSMC・台湾半導体業界が大地震を乗り切った理由 サプライチェーンの強靱さとしなやかさが浮き彫りに
あるサプライヤーは、CoWoS自体は以前から進められており、最近になって注目されるようになったという。
開発のきっかけは半導体産業が直面するムーアの法則の限界にあった。TSMCは400人規模のエンジニアと1億ドルの設備投資で開発を進めたが、当時はほとんどの顧客が採用しようとは思わなかったそうだ。
先進的なパッケージング技術ではあるが、いつ採算が取れるようになるのかは誰も予想できなかったからである。
TSMCやUMCなどの大手企業が国外で工場を建設する際、どうしても現地の事情を考慮し、外国の設備を導入することが多い。しかし、これではノウハウの塊であるCoWoSの技術流出のおそれが高まる。
そのため、以前から付き合いのあるサプライヤーを引き続き外国でも選択することになり、結果として台湾企業のさらなる成長を促すことにつながったのだ。
台湾半導体サプライチェーンの強み2:材料
工業技術研究院の張致吉氏は、日米独の半導体大手材料企業に比べ、台湾はスタートが遅かったこともあり、TSMCなどは材料調達で顧客企業の指示に従ってきたという。
そのような中、台湾の材料企業は半導体製造のアップデートや新規格が出現するタイミングでサプライヤーになることを目指していた。
2019年、日本が韓国向けにレジストの輸出制限を行った際は、台湾でも衝撃が走り、国内サプライチェーンの強化が叫ばれるようになった。
半導体封止やモニター向けの特殊化学材料などを手がける新応材の劉瑞麟氏は、レジストがほぼ日本企業の独擅場の中、自分たちで一から原材料を入手し合成するしかない。すべての製造プロセスが暗中模索の中で行われ、成功するかどうか誰もわからなかったと苦労を語る。
さらに製品の検査でも莫大な設備投資が必要で、すべての経営選択は大きなリスクを伴っていた。しかし、新応材は戦略が功を奏し、現在は収益の7割は半導体材料が担っているという。
寛量国際(QIC)が2024年1月に発表した半導体サプライチェーンに関するレポートで、台湾国内上場企業と外国投資家について特集した。その中でサプライチェーンの営業額は2033年までに2023年の12倍になると予測している。
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