TSMC・台湾半導体業界が大地震を乗り切った理由 サプライチェーンの強靱さとしなやかさが浮き彫りに
面白いことにTSMCの何麗梅副総経理は、地震発生前の3月に、アメリカCNNのインタビューで次のように述べていた。
「仮に深夜に地震が発生しても、全エンジニアは会社に戻って対応しなければならないことを自覚している」
一方、同番組では、このような台湾的な対応方法は、仕事に対する考え方などから他国では通用しない可能性があるとも付け加えていた。
もっともこのような仕事の姿勢が、台湾の半導体サプライチェーンの強みであることを証明したのは間違いない。巨大地震が台湾半導体業界の力強さとしなやかさを浮き彫りにし、市場に安心感をもたらしたのであった。
台湾半導体サプライチェーンの強み1:製造設備
TSMCのサステナビリティレポートによれば、2030年における間接材は64%、スペアパーツは60%が現地調達されることになるとしている。業界関係者は半導体製造が複雑化する中、TSMCのような本土化の流れは、台湾の製造設備や材料企業に恩恵をもたらすと見ている。
工業技術研究院の岳俊豪氏は2024年の台湾の工作機械の売り上げは1200億元(約5700億円)、半導体製造設備は1400億元(約6650億円)に達すると指摘。半導体製造は基本的に前工程と後工程に分けられ、前工程の製造設備はオランダASMLに代表される外国企業のシェアが高いのに対し、後工程では台湾企業も一定のシェアを有している。
台湾電子設備産業協会が2021年に発行した白書でも台湾企業の前工程の世界シェアは1~2%であるに対し、後工程では15%に達すると発表し、台湾が後工程に強いことを裏付けている。
台湾の半導体製造市場の成長は、TSMCの高性能・高密度パッケージング技術「CoWoS」が大きく関わっている。
2024年3月19日にアメリカ・サンノゼで開催された「GTC AI カンファレンス」の2日目に、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが国際記者会見で、「2024年、われわれはCoWoSを頼りにしている」と2度も語り、株式市場で関連銘柄が大きく買われることがあった。
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