「義援金と東電の補償金で生活保護打ち切り」に異議、南相馬市の3世帯が福島県に不服審査請求、法廷闘争の可能性も
ところが、その後も南相馬市では状況は変わらず、市当局による生活保護打ち切りが拡大していた。結局、3月11日から7月20日までの間に、生活保護を受けている405世帯のうち、219世帯が義捐金、仮払補償金を理由とした廃止措置を受けるという事態に発展している。
これを受けて、日本弁護士連合会は7月22日に南相馬入りし、生活保護を打ち切られた住民(6世帯)から事情聴取の調査を行い、厚生労働省通知にそぐわない保護策の運営状況などの情報を把握した。なかには、生活保護策の有無を決定するための自立更正計画の提出を求める通知と、生活保護打ち切りを意味する国民健康保険証が同時に生活保険世帯に郵送されるという「ずさんで、本来あり得ない」(尾藤廣喜弁護士)ようなケースすら発生している実体が浮かび上がったと言う。
さらに、日本弁護士連合会は同日、そうした状況の是正を求めて南相馬市当局者と協議したものの、協議後に記者会見した弁護士からは南相馬市役所の担当者たちから得た回答に対する強い不満の声が相次いだ。
たとえば、竹下義樹弁護士は「義援金、仮払補償金を収入認定することによる生活保護打ち切りが219件に上るという事態は、個別事案の問題とは受け取れない」と市当局の福祉行政そのものに問題があるという考えを表明。市当局に生活保護を打ち切った世帯に対して、改めて十分な説明と自立更正計画を再度提出するように促すことを要請したものの、「検討しますという返答しか得られなかった」と強い失望の念を示した。
日本弁護士連合会は同日、「南相馬市をはじめとする被災地における生活保護打ち切りの是正を求める会長声明」を発表。そのなかでは、「被保護世帯が受領した義捐金や仮払補償金については全額収入認定すべきではなく、仮払補償金について自立更正計画の提出を求めるとしても、(厚生労働省通知の)趣旨を徹底し、その金額を自立厚生計画に一括計上して収入認定除外することが必要不可欠である」という認識を示し、「南相馬を始めとする被災自治体が通知の趣旨を遵守し、人道にかなった運用を行なうこと、及び、国が被災実態に対して適切な指導を行うことを改めて強く求める」ことを厚生労働省、南相馬市に要請した。