ゲーセン「大量閉店」の背後にある本質的な変容 「千円でだらだら」若者の消費欲を満たせてない

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とはいえ、「せんだら」的な使われ方は、やはり利益率として見れば店側にとっては、あまりうれしくないことも確かだ。

先ほどの帝国データバンクの報告からもわかる通り、ゲームセンターの利益率は100円につき6円程度という試算も出ており、ただでさえ低い利益率で「だらだら」いられるのも困るだろう。実際、近年のゲームセンターはそうしたゲームの中でも売り上げを高く出すことのできるクレーンゲームに移行しているところも多い。

例えば、運営元の移動に伴い、セガのゲームセンターが衣替えした形のゲームセンター「GiGO」は、映画配給会社のギャガを子会社化し、積極的にIPを活用したクレーンゲームの展開を行っている。

GiGOの写真
「GiGO」を運営するGENDAは、2024年1月期の通期決算時点で、国内外で273店舗のゲーセン数を誇る。積極的なM&Aがよく話題になるが、「IPコンテンツ×プラットフォーム」を掲げ、ゲーセンを「プラットフォーム」と捉え直しているのもポイントだ(筆者撮影)

そうすると、クレーンゲームの景品を目当てに行く人々が、たくさんお金をかけて、景品を取ろうとするから、当然ながら売り上げとしては優れていることになる。これだけが理由ではないだろうが、GiGOは積極的にその出店を伸ばしている。

ただ、そのようなゲーム筐体の変化が、結果的には「だらだら」する場所としての、ゲームセンターの価値を下げているかもしれない……というのが筆者の考えだ。

実際、現在のゲームセンターは、どちらかというと、「クレーンゲームでお金をたくさん使う場所」として認識されているかもしれない。もちろん、現在でもゲームセンターにたむろする人々はいるだろうが、過去から相対的に見れば、そこでぶらぶらしたり、たむろすることがしづらい場所になっているのではないか。

クレーンゲームでは、100円で数秒から数十秒しか遊べない。1プレイ200円となると、5回で1000円となってしまう。これでは「コスパ」「タイパ」ともに最悪だ。そこがいかに楽しい場所だったとしても、「また行こうか」とはなりにくいだろう。

「せんだら」空間としての魅力をもう一度考え直してみてもいいのではないか

若年層に話を聞いていると、彼らがいかに「せんだら」の場所を求めているかがわかる。

例えば、シーシャ(水たばこ)屋などは、東京に集中しており、なおかつ最近はその数も横ばいになってきてはいるものの、そうしたニーズをうまく満たしているような気もする。それ以外にも、銭湯(サウナ)やカフェなどで、彼らはなんとなく、だらだら過ごしている。

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もちろん、今でもゲームセンターでだらだらする若者はいるし、ゲーセン自体に魅力がないわけでもない。短期的な利益も重要ではあるが、やはりその空間としての価値を見直すことが、業界全体の底上げにもなるのではないか。

もちろん、そうしたゲームセンターがまったくないわけではないし、例えば、ショッピングモールを中心に出店を伸ばすイオンモール系列「モーリーファンタジー 」などはショッピングモールでだらだら過ごす人々の、「せんだら」的ニーズを満たす場所になっているかもしれない。

ゲームセンターの先行きが不透明な時代だからこそ、逆に、もう一度、これまでゲームセンターが担ってきた「空間的な価値」を問い直すことも必要ではないか。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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