"非"ソフトウェア企業のDX化がこうも難しい理由 デジタル化の「見えない壁」を超えられない人へ

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「すべての企業」――。つまり、どの業界にも適用可能なほど、新たなテクノロジーがビジネスランドスケープを変容させていくことを示唆していたからだ。

この発言は、企業が生産性を向上させる、新しいビジネスモデルを開発する、コストを削減する、より良い顧客体験を提供するなど、企業活動の多くの点でソフトウェアとデータを活用する必要があることを、世界中の経営者に気づかせた。

これにより、伝統的な「ハードウェア」企業でさえも、ソフトウェア開発とデータアナリティクスに力を入れるようになっていった。

“非”ソフトウェア企業がたどる道

しかし今、自社を「ソフトウェア企業」と自認していない「“非”ソフトウェア企業」にとって、ソフトウェア企業への変貌の道は、まったく想像し得ないものだろう。

年商100億円を超えるような企業であればコンサルティングファームに依頼し、道筋・手順を示してもらうこともできる。

しかし、そのような企業はほんの一握りしかなく、自社にフィットせずに業績に結びつかないというケースもよく耳にする。それ以外の日本の企業は全体の99.6%に及び、そのなかでも積極的な取り組みを考えている企業・経営者はほんのわずかにすぎない。

この状況を変えるためにはまず、日本における「DXの見えない壁」について、ご理解いただきたい。

課題は「DX」ではなく、その「壁の打破」そのもの。つまり、ソフトウェア企業に変貌する自社の未来が見えないのは、DXが言語化できていないためだ。

中央省庁が提唱しているDX定義をあらためて確認してみよう。注目したいのは、省庁によりDXの定義が「産業レベル」と「企業レベル」に分かれている点だ。

それぞれを見ていくと、総務省による『情報通信白書』の産業レベルのDX定義は「産業のビジネスモデル」の変革とし、経済産業省の企業レベルのDXの定義は「ビジネスモデルや企業文化など」の変革としている。

これらの中央省庁が提唱するDXとは、まるで19世紀のイギリスの画家であるターナーの絵のごとく、写実的な風景画(業務効率化や業務改革)と、鑑賞者により解釈が異なる抽象画(企業変革)の両画法を、その都度用いてDXの世界観を描き出しているように見える。

そのため、そもそもの前提として、DXの定義が「産業レベル」を対象にしているのか、「企業レベル」を対象にしているのか、読み解く力が経営者に求められている。

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