起業や経営という面において、地方と都市部を比べると、もちろん都市部のほうが優れた面はあります。
一方で、地方で起業することのメリットも多々あります。
1つ目は、大応援団が形成できることです。現在でも、全国にはベンチャー育成に積極的なエリアがたくさんあります。応援団は起業家を孤独から解放し、大きな心の支えになります。こうしたつながりの強さは、地方の特権です。
2つ目は、その地域特有の特産品や風習などを考慮した、独自のサービス開発ができる点です。独自化・差別化は戦略的にも重要です。市場での地位も築きやすくなります。
3つ目は、コストメリットです。地方では東京などの都市部よりも相対的にコストが低いので、利益が出やすい構造を作ることができます。このメリットを、経営者は十分に活かすべきでしょう。
4つ目は、リモート環境の発展により人材獲得が容易になった点です。新型コロナ禍を経てリモートワークが普及したことで、地域企業でも以前と比べて人材を採用しやすくなりました。
たとえば、「東京を離れることは難しいけれど、地方のあのベンチャー企業で働きたい」と考えている人にもオファーできるようになっています。
また、「副業で地方企業を支援したい」という意志を持つ人材も多数います。つまり経営者がリモートワークにおけるマネジメントを実践できれば、地元人材だけでなく、全国から優秀な人材をチームに迎えることのできる可能性が高まるのです。
こうした点から、同じビジネスで起業するにしても、地方のほうがメリットを享受できる環境にあるのかもしれません。
地方の優位性を捉えつつ、新しい波を捉え、新しい経営スキルを身につけ挑戦する。一昔前とは異なる資源獲得が可能になっている時代だと思います。
地域全体で盛り上げる
地方のメリットを活かし、地域全体で盛り上げていく動きは、これからますます重要になってくるでしょう。その視点の1つが、大学との連携であり、起業家ネットワークの存在ではないでしょうか。
アメリカでは、西海岸のシリコンバレーでIT産業が爆発的に成長しました。それには、優秀なエンジニアを生み出すスタンフォード大学の存在が、とても大きいといわれています。
当然ですが、ハーバード大学だけに優秀な学生が集まっているわけではありません。日本でも、優秀な人材がすべて東京大学に集まっているわけではなく、地方にも優れた大学がたくさんあり、優秀な学生もたくさんいます。