つまり、がん患者のほぼ10人に1人は、診断されたことに驚き、不安と混乱の中で退職の道を選んだと見られる。こうした行動を、昨今は「びっくり退職」「びっくり離職」と呼んでいる。
あわてて仕事を辞めないで
今回取材した医師や支援者が口をそろえるのが、「がんと診断されてもすぐには仕事を辞めず、働き続けることは1つの選択肢。『びっくり退職』は避けたほうがいい」ということ。
愛知県がんセンターでがん患者の薬物治療にあたる医師の本多和典さんは、「お金がかかることと働けなくなること。その両方が急に襲いかかるのが、がんの特徴。勢いで辞めてしまうと、その後のサポートが難しくなることも。あわてて仕事を辞めないで」とメッセージを送る。
一般的には、がんと診断されたあと、入院して手術をすれば、それで治療は終わる――。そんなイメージがあるかもしれない。
確かに、がんの種類やステージ(進行度)によってはそうだが、手術後も受診して定期的に血液検査や画像検査を受ける必要があるし、40代後半~50代の女性に罹患の最初のピークがある乳がんでは、ホルモン薬の内服を5~10年続けることもある。言い換えれば、その間、治療費の支払いは続いていく。
手術・放射線と並ぶ主要な治療である薬に関していえば、「がん免疫療法薬(免疫チェックポイント阻害薬)」など、効果も価格も高い新薬が相次いで導入されている。
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