大規模災害下での弱者 避難所や仮設住宅にも「災害弱者」の視点を
「福祉避難所」という制度がある。阪神・淡路大震災の際、小中学校などの通常の避難所(指定避難所)では介護が必要な高齢者や障害者への対応が困難だったことを教訓に、1997年に創設された。老人福祉センターや特別養護老人ホームなど、主に福祉施設を対象に指定し、地震などの際に「災害弱者」(災害時要援護者)を受け入れる。
福祉避難所ではおおむね10人の利用者に1人の割合で生活相談職員が配置され、災害救助法に基づき、ポータブルトイレや手すり、仮設スロープの設置、紙おむつなどの使用について、国が費用を負担する。
東日本大震災でも福祉避難所は重要な役目を果たした。仙台市では40カ所の福祉避難所で認知症を持つ高齢者など283人が生活を送り、現在までにほとんどの人が自宅に戻ったり、特養ホームなどに入所した。
仙台市内の福祉避難所の中でも、特に多くの災害弱者を受け入れたのが、高齢者福祉施設「宮城野の里」(宮城野区)だ。ケアハウス(軽費老人ホーム)、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)など多種類の事業を運営する同施設は、仙台市から新たに指定を取り付けて3月21日に福祉避難所を施設内に開設。「マルフク」の愛称で、認知症の高齢者や末期がんの患者、脳卒中の後遺症を持つ高齢者など30人を受け入れた。
福祉避難所の整備は不十分
本来であれば、小中学校などの指定避難所も、障害を持つ人が利用できる仮設トイレや男女別の更衣室などの設備を備えているべきだ。しかし、多くの指定避難所にはそうした設備はなかったか、混雑していてすぐには利用できなかった。