大規模災害下での弱者 避難所や仮設住宅にも「災害弱者」の視点を

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 仙台市の場合でも、指定していた52カ所の福祉避難所のうち、実際に開設できたのは25カ所にとどまった。そのため、認知症グループホームや老人保健施設などを新たに指定することで急場をしのいだ。ガソリン不足でスタッフが通勤できなかったことなどが、フル稼働できなかった理由として挙げられている。

もともと在宅生活が多い障害者へのフォローも十分とはいえず、「本来、福祉避難所に入所したほうがよかった人はもっといたはず」と仙台市の担当者は振り返る。

配慮不足の仮設住宅

災害弱者への配慮という点では、仮設住宅にも問題がある。多くの仮設住宅は障害を持つ人の入居を想定していない。スロープのある仮設住宅が散見される程度で、介護用ベッドを置ける造りにはなっていない場合がほとんどだ。そのため、福祉避難所で生活した高齢者のうちで仮設住宅に入居した人は非常に少ない。仙台市の場合、仮設住宅に家族とともに入居した人は283人のうち10人程度。宮城野の里ではわずか1人にとどまった。

前出の片桐さん夫妻は、知り合いのつてで木造平屋建ての住宅を借りることができたものの、物件を見つけるまでに長い時間を費やした。

仮設住宅への移行や運営のあり方についても再検討が必要だ。

多くの自治体は、避難所から仮設住宅への入居とともに、被災者への食事や食材の提供を打ち切った。だが、自宅や自家用車などの財産や仕事を失った被災者は「自立生活」にスムーズに移行できるとは限らず、節約のために仮設住宅に移らずに、今も避難所で暮らす人は少なくない。これでは、生活の再建は望めない。

そうした問題への対応策を打ち出したのが、福島県相馬市だ。同市では被災者が仮設住宅に入居する際、1人につきコメ30キログラムと食器や布団などの家財道具、そして1世帯当たり10万円の支度金を支給した。

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