高齢者の交通事故、増加の要因は「認知症」ではない 「脳ドックデータ」で判明した大きな事実誤認

拡大
縮小
しきりに報じられる高齢ドライバーの事故。その多くは認知症ではないという / PIXTA(ピクスタ)
「もう認知症の人には運転させないで……」
高齢ドライバーによる事故のニュースが報じられた際、このように思う方も多いのではないでしょうか。しかし、その認識は誤りです。事故を起こしている高齢ドライバーのほとんどは、認知症ではありません。では、どんな人が事故を起こしているのか。そして、その原因はいったいなんなのか。
その答えは、最近の脳ドック研究(蓄積されたデータ)によって徐々に明らかになってきました。日本初の「自動車運転外来」を開設した認知症専門医・朴啓彰氏の著書『75歳を越えても安全運転できる運転脳を鍛える本』より、一部引用・再編集して、認知症と高齢ドライバーをとりまく現状を紹介し、事故を起こす原因とその対処法に迫っていきます。

75歳以上と25歳未満の死亡事故率に大差はなし

2024年2月25日、奈良市の東大寺の参道を車が暴走して複数人をはね、1人が死亡、1人が腰の骨を折る重傷を負いました。車を運転していたのは79歳の男性で、過失運転傷害容疑により現行犯逮捕。「アクセルとブレーキを踏み間違えた」との趣旨の話をしているそうです。

3月1日には、群馬県太田市の北関東自動車道を軽自動車が逆走し、乗用車と正面衝突をするなど計4台が絡む事故が発生しました。これにより、軽自動車を運転していた86歳の男性が死亡。事故に巻き込まれたほかの3人が負傷しました。

このように、最近は高齢ドライバーの事故のニュースが頻繁に報じられています。これを重くみて、「高齢者に車を運転させてはいけない」「免許を与えるべきではない」という論調も散見されます。しかし、それはやや行きすぎといわざるを得ないでしょう。なぜなら、事故を起こす高齢ドライバーがいる一方で、安全運転に徹し、事故とは無縁のカーライフを送っている高齢ドライバーもいるからです。

次ページ死亡事故の発生率は若者とほぼ同じ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT