「高齢者アンダークラス化」するミドル期シングル 「ゆるいつながり」で親密圏を形成できるか
でも、この極端な人口動態上の変化に日本人は特段の関心を示さなかった。結婚したくない、家族を形成したくないという人が増えてきました。ああ、そうですか。お好きにどうぞ。という話で終わった。
この集団がいずれ遭遇するであろう「経済的困窮や社会的孤立という問題が深刻化するという未来のリスク」に「いちはやく」着目した研究が登場したのが2010年だと本書には書いてある(前掲書、22頁)。「いちはやく」ということは「それまで誰も研究しなかった」ということである。
配偶者のいない生き方を選ぶようになった理由
どういう理由で人々が配偶者のいない生き方を選ぶようになったのか、その理由も本書には列挙してある(資本主義の要請だとは書かれていないが)。東京にシングルが多いのは、地方在住者が家族のもとを離れて東京に進学や就職で集まるからである。これは当然。もう一つは社会進出を果たした女性の晩婚化。シングル女性は移動しやすい。住む場所を変えるほど人は家族形成から遠ざかる。「人口移動によって出生率は低下する」のだ(前掲書、80頁)。
それに女性は地方の伝統的規範を忌避する傾向がある。「男尊女卑や過度な性別役割分業といった、女性にとっての負の要素」(前掲書、94頁)から離脱するために地方圏出身女性が東京区部へ移動している可能性はあると本書は論じている(前掲書、94頁)。そこまで断言していないのは、データが不足しているからだろうけれど、私もそうだと思う。彼らは「画一性からの脱却と多様性への渇望」に駆動されて大都市圏に引き寄せられる(前掲書、97頁)。
次の論点は、このシングルたちはどのような社会的な関係を形成しているのかである。彼らが高齢化したときにアンダークラス化しないために欠かすことのできない条件は地域コミュニティにコミットしていることだからである。果たしてミドル期シングルたちはどのような「親密圏」を形成しているのか。
これについては男女差が際立っている。男性シングルは親密圏の形成が苦手で、女性のほうがずっとその点ではすぐれている。これはどなたも経験的にわかるだろう。
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