とはいえ、始めてからの3年間は、多くの犠牲を払ったといいます。多くの人が「成功するはずがない、京都はとても難しい街だ。君たち2人がここで成功するのは不可能だ」と言いました。一方で、京都市長はこの日仏プロジェクトに非常に驚き、当初から協力的で、多くの場所を提供してくれた、といいます。
実際、KYOTOGRAPHIEの大きな特徴の1つは、寺社や町屋など歴史的建造物が会場になっていることです。例えば、今年は「誉田屋源兵衛 竹院の間・黒蔵」では、上海で結成されたアートユニット「Birdhead(バードヘッド/鳥頭)」の展示が行われるほか、建仁寺・両足院では、柏田テツヲさんの作品が展示されています。伝統と新しさをミックスさせたり、大胆な展示を行うことで、作品が新たな魅力を帯びるのです。
KYOTOGRAPHIEには毎年、メインテーマがありますがこれは夫婦で話し合って決めています。その年のニュースや環境を考慮してまず夫婦で決めてから、95%が女性である経営陣とそのアイデアを共有します。テーマに決まりはなく、夫婦の主観で決められることが多いのですが、「意味があり、サプライズがなければいけません」とレイボーズさん(2人の口からは「サプライズ」という言葉がよく出ます)。
今年のテーマ「Source(ソース)」ですが、ブラジルのヤノマミ族の生活と苦悩をとらえた(クラウディア・アンドゥハルさん)や、イランで起きた1人の女性の死をめぐる蜂起や抗議活動に関するル・モンド紙の展示など、幅広い作品が展示されています。
出展するアーティストの選択に関しては、キュレーターから多くの提案を受けるようになりましたが、写真祭の前にすべてのアーティストに直接会うようにしています。また、KYOTOGRAPHIE終了後には、今度はフランスでパートナーや協賛企業と面談するなど、対話を重視しています。
「ブランド化することには興味がない」
そんなKYOTOGRAPHIEの評判は海外でも高く、「例えば香港でのフランチャイズ販売の提案をたくさん受けました」とレイボーズさん。「ただ私たちはビジネスマンではない。ブランド化することに興味はありません。私たちが求めているのは、最高のクオリティです」。
今年2月、KYOTOGRAPHIEは芸術各分野において毎年優れた業績をあげた人に贈られる、「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞しました。KYOTOGRAPHIEは単なる美の祭典ではなく、「日本でタブー視されていること」に挑むことで、社会問題や私たちが生きたい未来について深く考えることを促す機会になっています。
移住した当初は、京都独特のカルチャーやコミュニケーションに戸惑うこともあった、という夫妻ですが、「自分たちの方法で馴染むようにした」ことで今では幅広い交友関係を築いているといいます。「京都はつねにインスピレーションをくれます」というレイボーズさんの言葉通り、今年も多くの人がKYOTOGRAPHIEを通じて京都の熱を感じるのでしょう。
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