震災後しばらくは互いに3.11のトラウマを抱えながらも、せっかく新たな場に来たのだから、「当時タブー視されていたテーマを議論できる場を作りたかった」といいます。「私たちは、原発事故に関するメディアの取り上げ方や、これが非常に微妙で重要なテーマにもかかわらず、一般市民のための情報が不足していることに腹を立てていたのです」(レイボーズさん)。
写真は世界共通言語であると考えた2人は、KYOTOGRAPHIEを立ち会えることを決めます。さらに、外国人写真家を招聘することで、日本ではタブー視されているテーマについてのメッセージをよりシンプルに伝えることができるようになる、と考えました。今でもこの写真祭の出展者の7割は外国人写真家で、それゆえに海外でも知られる写真祭となったわけです。
「KYOTOGRAPHIEはクオリティと実現したいプロジェクトに集中しています。私たちは最高のスポンサーを見つける方法を知っていますし、彼らやアーティストと協力して仕事しています」とレイボーズさん。
あのシャネルもスポンサーになった
「誰からも指示されたくない」との理由から、KYOTOGRAPHIEは開催当初から、公的資金を使わずに開催しています。写真祭の目的は社会を変えることであり、最も重要なことは利益を得ることではなく、「毎年続けること」だといいます。
そうした「意思」を持つKYOTOGRAPHIEのスポンサー陣は非常に豪華です。初年度は、シャネル日本法人で会長を務める、リシャール・コラス氏がスポンサーに名乗りを上げました。通常、シャネルでは、シャネル以外のイベントのスポンサーになることはありませんが、コラス氏自身が写真や京都の町屋が好きだったこともあり、KYOTOGRAPHIEではシャネルのロゴを使うことができました。
このほかにも、アニエス・ベー、クリスチャン・ディオール、ルイナール、ケリング、ハースト婦人画報社などがスポンサーに名を連ねています。「ブランドから内容や見せ方を変えろと言われることはありません」とレイボーズさんはいいますが、それは2人の共同ディレクターが内容やセンスにこだわった企画を提案しているからでしょう。
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