障害者雇用の現場では、採用した障害者ができそうな仕事をどうにか探し出して与える、という流れになりがちだが、京都太陽は違う。最初にやるべき業務を設定するのだ。そのうえで、個人の障害特性を可視化し、仕事の内容とすり合わせ、遂行のハードルとなるものを取り除く、という過程を辿っている。
頼みたい仕事がある場合、身体障害者には一度やらせてみて、何が妨げになるのかを明確にする。知的障害者には作業内容を丁寧に説明して、理解されなかった点を整理していく。
カギとなるのは各生産ラインに配置したリーダー社員だ。各々の障害特性に合わせ、機械の操作性を最適化するためのアイデアを考案。技術員と相談しながら、社内に設けた工作室で必要な補助具を自作する。これまでに製作した数は約250に及ぶ。ちなみにこのリーダー社員は、障害の有無にかかわらず、意欲や能力を重視して任用される。
双方向のコミュニケーションを深める
発達障害を含む精神障害者は、知能や運動機能は健常者と変わらない。仕事自体は問題なくこなせるが、コミュニケーションで苦労するケースが多いという。そうした障害の場合は「どちらかというと、業務より同僚とのマッチングが必要」(三輪氏)。
対面での会話が苦手な人には電子ツールを使って対応。「疎外感を感じなかったか」など、心身のバロメーターとなる項目をいくつか定めておき、本人が4段階で評価する。勤務の感想などを書く自由記述欄と合わせ、毎日入力してもらう。
上司はそれを読んでコメントを返す。交換日記のようなやり取りを通じて、早期に異変や悩みを察知し、迅速な支援につなげる。就業の妨げとなる行動を取ってしまった際も、原因を分析して対策を考え、本人の同意を得たうえで職場内や家族にも共有する。
双方向のコミュニケーションを深めることで、同僚たちは各々の障害を受け入れられるようになる。本人も安心し、精神的に落ち着く。こうしたプロセスを経ると、問題と周囲に受け取られるような言動の多くが改善されるという。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が2017年にまとめた障害別の調査では、就職から1年後の職場定着率が「身体」で約61%、「知的」で約68%、「精神」で約50%。そうした中、京都太陽を辞めた障害者は、直近5年で計3人にとどまる。
京都太陽は障害の有無区分にかかわらず、誰もが生き生きと働ける会社づくりに成功していると言えるだろう。法定雇用率が引き上げられ、インクルーシブな社会の実現が求められる中、学ぶべき点は多いはずだ。
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