卵子凍結を選んだ30代女性が考える「自分の価値」 東京都の助成事業に予想の7倍・1500件超の申請
卵子凍結を決めた理由は「焦りたくない」ということだった。周囲にいる同年代の友人たちも、その年齢ならではの焦りを抱えていた。
「マッチングのサービスを利用してパートナーを探す人も、たくさんいました。そこでは『妥協が必要』と言われるそうです。でも私は、自分が決めたことを大事にしてきたので、とてもそれはできないと思った」
とはいえ、時間というプレッシャーは容赦なく菜緒さんを苦しめる。起業した自分の会社が軌道に乗り、大きく育てていきたい時期に、妊娠できる時間のカウントダウンが重なるのはつらかった。
「妊娠しにくくなることで、女性は価値がなくなったように言われてしまう。それなら、価値の低下を緩和する技術を使って自分の価値を保つのも、1つの選択だと考えました」(菜緒さん)
採卵のためには、自己注射をしてたくさんの卵胞を育てる必要がある。初めての自己注射は友人にそばにいてもらい、やっとの思いでやり遂げた。
そして採卵。幸い、菜緒さんは同年齢の平均よりも多い16個の卵子が採れた。「凍結を終えたときは、ほっとしました」と菜緒さんは振り返る。

都の助成事業に1500件もの申請
日本生殖医学会が卵子凍結を最初に容認したのは、がんの治療を始める人などを対象にした「医学的適応の卵子凍結」で、2000年のこと。やがて「社会的適応の卵子凍結」も認められ、「パートナーが見つからない」「今は仕事が忙しい」など、さまざまな理由で卵子を凍結する女性が出てきた。
2023年9月には、東京都が卵子凍結の費用を助成する事業を開始。2024年4月5日現在、申請件数はすでに1500件を超え、事業開始当初に予想された件数200件の7倍以上となっている。
必須となっている説明会の申し込みは9600件を超えており、2024年度も事業は継続。予算の規模は前年の5倍に増えた。
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