700円で美味しい「インネパ」背後にある壮絶な貧困 日本に出稼ぎに来た人々追った『カレー移民の謎』
インネパの子どもの増加に伴って、現場への負担も重くなる。
「いくつかの学校を見ましたが、先生方が疲弊しています。あまりにも外国人が増えすぎ、かつ多国籍になりすぎてどう対応していいかわからない」
筆者の友人にも、夜間高校で働く教員がいる。彼女のクラスは、生徒5名のうち、3名が移民の子で、中にはネパール人の子どもがいるという。その友人は国語教員なのだが、言葉もおぼつかない移民の子ども相手に『羅生門』や古文を教えなければならない悩みをよく聞かされていた。また、学習指導以前に、生活指導で割かれる時間も多く、現場の多忙さは度を越しているものだった。
こうした問題は、移民の側だけにあるわけではないと、室橋さんは強調する。
「この問題は行政が本当に対策をしっかりしないと、のちのち、大変な問題になると思うんです。彼らが大きくなって、日本語が中途半端な状態で社会に出てどうなるのか、ということを考えてしまいます」
日本に連れてこられたインネパの子どもが不幸になってしまう事例が多くあることから、近年では、子どもを本国に置いたまま日本で働くネパール人も増えているという。
「増えているのは、両親だけ日本に来てネパールに仕送りするパターンです。こうした状況では、子どもはネパールにいる祖父母が面倒を見ています。僕は、インネパの人々の出身地が多いバグルンに行ったことがありますが、そのとき、祖父母と子どもだけで住んでいる家が多かったのも印象的でした。祖父母はいても、親の愛情に飢えている子ばかりです」
両親二人が日本で稼げば、ネパールではそこそこのお金になる。こうして日本で稼いだお金を本国に仕送りするパターンも増えているのだ。そんな中、室橋さんが印象的だったことがあるという。
「本当は仕送りしないといけないのに、その分を飲み代に使ってしまったり、フィリピンパブにはまったり、という人間らしいエピソードも聞くこともありました。特にネパール人などがフィリピンパブにはまるのは、外国人労働者の多い北関東ではよくある光景みたいで、最初は日本人の同僚に連れていかれて、気付いたら自分もはまっていた……ということがよくあるらしい」
また、こうしてはまったパブで、女性に騙されたり、逃げられたり、そんな「やらかし」エピソードも、室橋さんはたくさん聞いてきた。
「頑張って日本で働いて、やっとの思いで国に帰ってきたら、置いてきた妻が他の男と結婚していて、家族のために建てた家が自分のものでなくなってしまった、なんてエピソードもありましたね」
新大久保という場所で「人間」として外国人に接する
室橋さんは現在、新大久保を拠点に活動をしている。新大久保は、さまざまな国籍の人が暮らし、店を出している。リアルな外国人の生活に室橋さんは触れてきた。だからこそ、生身のインネパの姿を聞き出せているのかもしれない。室橋さんは外国の人へのインタビューについてこう述べる。
「外国人は、かなりフレンドリーな人が多いです。日本人を取材するよりやりやすいというか、気楽ですね」
また、こうしてさまざまな人に話を聞く中で、別の移民の人を紹介してもらえる機会も増えた。
「やっぱり人の紹介の力は、日本社会よりも強いんですよ。特に外国で商売してる人たちはみんなそうです。昔から日本で同じように商売をしている友達同士とか、そういう人が言うならいいよ、みたいな。早い段階で日本にやってきたネパールの人の中には、色々なことがあったからでしょうが、昔のことを話したがらない人も多い。でも、そういう人も話をしてくれたのも、やはり人の紹介の力だったと思います」
さまざまな外国人の人の話を聞く中で、室橋さんはこう主張する。
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