700円で美味しい「インネパ」背後にある壮絶な貧困 日本に出稼ぎに来た人々追った『カレー移民の謎』
2004年から2014年あたりまでタイにいましたが、帰国したとき、渡航する前よりはるかに外国人の数が多くなっていて驚きました。そこで、日本に住む外国人の生活はどうなっているのかが気になったんです」
こうして、日本に住む外国人について調べ始めた室橋さん。その中でインネパを意識したのは、ある取材のときだった。
「夜間中学の取材をしていたんです。いま夜間中学って外国人が日本語を学ぶ場にもなっているんですが、そこに通っていたことがあるというネパール人が『カレー屋の子供は皆、いろいろ抱えているんです』と言っていたんです。
彼は親が『インネパ』の経営者だったんですが、忙しすぎて全然子どもに構ってくれないなど、なかば自虐的にそうしたことを言うんですよ。その言葉が気になった」
こうして室橋さんはインネパの取材を始めることとなった。
「取材を始める前、僕はインネパについては、カレーが安くていいな、ぐらいに思っていました。でも、取材を続ける中で、そうしたインネパの中にも切ない部分があることがわかり、あの夜間中学に通っていた彼が言っていたことの意味もだんだんとわかってきました」
厳しい状況に置かれるインネパの子どもたち
実際、取材の中でわかったのは、インネパの子どもが置かれている厳しい状況だった。
「ネパール人の中には『家族は一緒にいるべきだ』と思っている人も多い。だから、親が一人で日本にやってきて、生活が安定するとすぐに家族を呼ぶわけです。
でも、子どもがもう中学生ぐらいになっていると、日本語を自然に覚えられる年齢ではないですから、学校の授業はほとんど理解できない。それで友達もできずに学校を辞めて、だんだんと悪いほうに転がっていく……なんてことはよくあります。親の教育水準も十分でない場合が多く、後先を考えず、すぐに呼び寄せてしまうんです」
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