一時的労働力でなく定着、移民受け入れの正念場 『人口亡国 』毛受敏浩氏に聞く

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『人口亡国』著者の毛受敏浩氏
毛受敏浩(めんじゅ・としひろ)/日本国際交流センター執行理事。慶応大学法学部卒業、米エバグリーン州立大学公共政策大学院修士。兵庫県庁に入職後、日本国際交流センターに勤務。文化庁文化審議会委員。著書に『人口激減─移民は日本に必要である』(新潮新書)、『自治体がひらく日本の移民政策』(編著、明石書店)など。
あらゆる産業で人手不足が深刻化する日本。政府は外国人を「労働力」として受け入れる政策を推進しながらも、移民問題を正面から議論することは避け続けてきた。移民をめぐるジレンマがなぜ生じたのかを歴史的に解説する本書は、日本が外国人から「選ばれる国」ではなくなる危機感や、すでに社会の分断が起こりつつある現実を突きつける。
『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン』(毛受敏浩 著/朝日新書/935円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──街中で外国人を見かけることが多くなりました。

コロナ禍前は日本人の人口減少の4割を補う形で在留外国人が増えていました。直近1年間でも日本人の人口減少80万人に対して、外国人は31万人増加しています。

しかし、政府はこれまで移民受け入れを表明したことがありません。日本以外の先進国は、言語力や職務経験に基づき活躍が見込める人たちを受け入れる、という移民政策を打ち出すことで、人口維持と経済発展を目指しています。それに比べ、日本は外国人を一時的な労働力として受け入れるも、移民はタブー視されてきました。

2010年代ごろには、永住者の地方参政権をめぐる政治論争や、中国、韓国との間の領土問題もあり、移民政策をとると日本が中国人に乗っ取られるという議論やヘイトスピーチが横行しました。移民への誤った認識によってタブー化が強まっていったのです。

政府はすでに外国人の定着を図る政策を始めていますが、一部の保守層の移民への拒絶反応を恐れ、「移民政策をとらない」という看板は降ろせずにいます。「移民ジレンマ」と呼べる状況です。

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