ハーレーダビッドソンが熱いファンを作る仕組み 直営販売店がなくても顧客との関係性を構築
また、「出会う」楽しさでは前述の米国復活の1つの鍵であるH・O・G(ハーレー・オーナー・グループ)コミュニティがあります。HDは全世界で130か国以上に広がります。H・O・Gジャパンは1994年に設立され、会員数は世界2位です。年会費を払って加入すると専用のピンとメンバーズカードが渡され、メンバー限定や優待制度のあるイベントに参加できます。オーナーがハーレーのある生活を楽しみ、より充実させる大きな魅力になっています。仲間のオーナーたちとの大規模なツーリングも楽しみです。全国にチャプターとよばれるH・O・G地域ごとの支部があります。
イベントも盛んに開催されます。このイベントにはオーナーだけでなく、その家族や友人、ハーレーに関心を持つ潜在顧客などさまざまな層が参加します。HDJのスタッフだけでなく、オーナーや参加者が共創して楽しいイベントになるのです。大規模なイベントとしては、何万人も集まる「富士ブルースカイヘブン」や「長崎ハーレーフェスティバル」があります。
1998年の富士ブルースカイヘブンの初回への参加者は1700人足らずでしたが、11年後の11回には5万人を超えました。そのうちの半数以上はハーレーの非オーナーです。
ハーレーの10の楽しみを具現化した企画がたくさんあります。それでいてHDJや販売店の内輪ノリや自己満足は見られず、参加者の誰もが楽しめるイベントなのです。ですからこのイベントを通じてハーレーの購入を決めた人が続出します。
オーナーにとっても、ファン同士の交流が生まれると、イベントを離れても交流が継続・拡大しファン同士その関係度合が深まっていくのです。イベントを通じての顧客体験は、関係構築の原動力ともなっています。このようにHDJは顧客体験を重視した関係性マーケティングでさらにコアな熱烈ファンを増やし顧客や販売店とともに「価値共創」をし続けているのです。
顧客ロイヤリティ(忠誠度)という考え方
マーケティングの観点からみると、既存顧客にどれだけ商品やサービスを使ってもらっているかという考え方として顧客ロイヤリティ(忠誠度)があります。関係性マーケティングの1つの目的は、ロイヤル・ユーザーを獲得することです。そのためには、顧客に驚きと感動体験をさせることも重要になります。まさにその見本が東京ディズニーランドです。
ハーレーダビッドソンジャパンも、感動体験ができる非ユーザーも参加する大規模イベントや、既存オーナーのクラブ組織H・O・Gで「ハーレーの10の楽しみ」をさらに深めることができるのです。
HDJは多くのロイヤル・ユーザー(熱狂的なファン)に支えられているので、直営販売店やマス広告投資をしなくても強い顧客との関係性構築ができています。つまりロイヤル・ユーザーを獲得するには顧客の感動体験や体験価値の積み重ねが効いてくるのです。顧客の流れはこうなります。
「非ユーザー」⇒「トライアル・ユーザー」⇒「リピート・ユーザー」⇒「ロイヤル・ユーザー(熱烈なファン)」
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