「若さ」に価値を置いてきた日本社会に言いたい事 坂東眞理子さん「年を重ねて知ることも多い」

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対してゴルフやアーチェリーなど、技と経験が要求される種目では40~50代でも活躍する選手がたくさんいます。

スタイルや美貌は、年とともに衰えていくとされています。

私の故郷に「風の盆」という優雅な民謡踊りがありますが、男踊りで一番かっこいいのは、贅肉がなくすっきりしたスタイルの高校生の男の子だそうです。女の子でも10代の少女たちの匂うような肌の美しさはその年代にしかありません。

20代からは男女ともふっくらとしてきますが、それを「若さを失った」とマイナスに評価するか、女らしい別の魅力がついてきたと評価するかによって違います。

中高齢期に「真の花」を咲かせる

一方で、70代でも美しい踊りを続けておられる森下洋子さんのようなバレエダンサーもいらっしゃいます。日本舞踊や能、歌舞伎などではみずみずしい若手とともに、経験と技を積み重ねた方たちが60代、70代でもたくさん活躍されています。

俳優の世界でも、若手が次々と登場するなかで、ベテランでも魅力を保ち続けている方はめずらしくありません。

若いほうが絶対に美しい、魅力的とはいえません。能の世阿弥がいっているように、若いときは「時分の花」がありますが、それがなくなった中高齢期に「真の花」を咲かせる方は多いのです。

つまり、日本は美しさについては「若さ」に価値を置いてきましたが、そろそろ見直すべき時期になっているのだと思います。人間の能力が試験の成績や偏差値だけでは測れないように、人間の総合的な価値も、体力や見た目だけでは測れないものなのです。

生物としての若さだけでなく、これまでの経験や磨いてきた技を評価される分野もあります。それには評価する「目利き」が必要とされるのです。

目利きになるには経験が大事です。

知的能力でも集中力や記憶力のように、若い時期のほうが優れている分野もありますが、判断力、包容力、洞察力、類推力、共感力のように、年を取ってから伸びる能力もあります。

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