利他的な遺伝子 柳澤嘉一郎著
利他的な行動を見聞すると、人は「本能的に」幸せを感じる。特に、自己犠牲を伴う利他行動にいたく感動する。東日本大震災でも、津波避難を呼びかけ続け自らは犠牲になった役場職員をはじめ、いくつものエピソードが伝えられ、反響を呼んだ。
学術用語の利他的や利他性は、「自分の生存や繁殖を犠牲にして、他のものの生存や繁殖を高めること」と厳密な定義になるが、人の場合は、人同士の共感や信頼、そして情愛と結び付く。
人は日頃、利己を優先して生きているが、その一方で純粋な利他性を持ち、「二つとも、本能として、遺伝子によって脳に刻まれている」という。ただし、この利他性の顕在化には、乳幼児期に「いつも優しく接してくれる“特定の人”」がいることが大事なようだ。いわば「三歳児神話」を裏付ける。
共感、信頼、情愛はどうすれば育てられるのか。科学の最新知見を交えて、人の本質に迫っている。
筑摩選書 1680円
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